退職金制度特集

退職金制度とは?主要制度の比較と会社の導入メリット/デメリット

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多くの会社で取り入れられている「退職金制度」は、従業員にとってはメリットであり、入社や勤続に対する意欲に直結します。

しかし会社にとって退職金制度とは、メリットがある反面、経営における大きな負担にもなり得る制度です。
導入するかどうかは、会社の規模や、経営状態などによって慎重に判断しなくてはいけません。

そこで本記事では、退職金制度の導入を検討する際に有用な基礎知識を解説します。

退職金制度そのもののメリットデメリットはもちろんのこと、退職金制度と一口にいっても多数あるため、種類別の特徴についても分かりやすくまとめました。

会社に退職金制度を導入すべきか悩んでいる経営層や総務・人事担当の方は、ぜひご一読ください。

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そもそも退職金制度とは?

退職金制度とは、従業員が退職する際、従業員の働きに応じた金額を支給する制度です。
一般的には会社から従業員に対して支給しますが、制度によっては別機関からの支給になるケースもあります。

また、退職金制度は「社内準備型」「企業年金型」「退職金共済型」の3つに大きく分けられます。

種類によってメリットやデメリットが大きく異なるため、退職金制度の導入を検討する際には、種類別に検討することも大切です。

退職金制度がある企業の割合は92.6%

平成27年度時点の調査(※)では、92.6%の企業がなんらかの退職金制度を導入しているとのことでした。
そのうち社内準備で退職金を用意しているのは80.7%企業年金制度を導入しているのは51.7%です。
複数の退職金制度を併用している企業も多いことが、この結果から分かります。

(※)企業規模50人以上の民間企業を対象として、日本行政機関「人事院」が調査を実施
参考:人事院『民間の退職金及び企業年金の実態調査の結果並びに国家公務員の退職給付に係る本院の見解について

100人未満の企業では約75%が整備

企業規模を50人以上100人未満に限定すると、退職金制度の導入率は約75%に下がりますが、それでも十分に高い導入率であることには、変わりありません。

その背景には、日本特有の終身雇用制度が深く結び付いていると考えられるでしょう。
しかし、近年は働き方のスタイルが変化していることで、大企業では退職金制度の導入率にほぼ変化はありませんが、中小企業では減少の傾向が見られます。

とはいえ、安定した雇用を求める方は、今も多いのが実情です。
平均よりも高年収や好待遇にするなど、退職金制度を上回るメリットを用意できない場合は、退職金制度の有無が求人時の応募者数や、従業員の勤続年数に大きな影響を与えるでしょう。

参考:人事院『民間の退職金及び企業年金の実態調査の結果並びに国家公務員の退職給付に係る本院の見解について
参考:りそな銀行『企業年金ノート

退職金制度の種類と主な特徴

3種類に大別できる退職金制度ですが、ここではさらに具体的に分類し、それぞれの主な特徴を解説します。
なお、「企業年金」とは簡単にまとめると企業が従業員のために設ける年金制度のことをいいます。

種別 具体的な退職金制度
自社準備型
  • 内部留保
  • 保険
    など
企業年金型
  • 確定給付企業年金(DB)
  • 企業型確定拠出年金(企業型DC)
  • iDeCo+(イデコプラス)
退職金共済型
  • 中小企業退職金共済制度
  • 小規模企業共済制度
  • 特定退職金共済制度

自社準備による退職一時金

一般的にイメージされることが多い退職金とは、内部保留や保険などを原資にする「自社準備による退職一時金」です。

従業員の働きぶり(勤続年数や役職など)に応じた退職規定を自社で用意し、運用します。

ほかの制度は外部の力も借りることで退職金を用意するのに対し、自社準備による退職一時金に関しては、会社の自助努力によって用意するのが基本となります。

つまり従業員の退職に備えた内部保留が必要になるため、経営状態が安定していない会社では、導入が難しい傾向にあるでしょう。

確定給付企業年金(DB)

確定給付企業年金(DB)」とは、企業年金型に分類される退職金制度のひとつです。

その名前のとおり年金方式の制度であり、公的年金に年金を上乗せする形で退職金が支払われるのが基本です。
また、「確定給付」とあるように、あらかじめ企業と従業員が給付内容や将来の受給額を約束する制度で、掛金は原則、会社負担ですが、損金扱いにできます。

なお、掛金の運用は信託銀行や保険会社など第三者機関が行うケースが多いため、会社にも加入者にも投資運用の負担はかかりません。

確定給付企業年金の記事をみる

はぐくみ企業年金」は現在、導入企業や加入者が急増している注目の企業年金・退職金制度です。一部を除いて「業界業種を問わず、中小企業から大企業まで導入できる」ほか、高齢期の資産形成が基本になる制度とはいえ、「退職時などにも受給可能」、選択制などの制度設計により「掛金拠出負担を抑制できる」、厚生年金被保険者であれば「従業員はもちろん、経営層も加入できる」など、従業員、経営者、会社それぞれにメリットが生れるとてもおすすめの制度です。


企業型確定拠出年金(企業型DC)

企業型確定拠出年金(企業型DC)」もまた、企業年金型に分類される退職金制度のひとつです。

掛金に関しては原則、会社負担であり、損金扱いできます。

確定給付企業年金と大きく異なるのは、運用が加入者に任せられており、運用成果によって給付額が変動する点でしょう。

「マッチング拠出」といった制度設計を採用した場合には、加入者が掛金を上乗せすることも可能となり、より積極的な投資運用が可能となっています。

ただし、途中解約不可かつ、給付は原則60歳以上といった縛りがあるため、どちらかというと終身雇用型の企業向け制度だといえるでしょう。

iDeCo+(イデコプラス)

iDeCo+(イデコプラス)」は、個人型確定拠出年金である「iDeCo」の加入者が利用できる退職金制度です。

iDeCo+を導入すると、iDeCo加入者の拠出掛金(加入者掛金)に、会社が掛金を上乗せできるようになります(事業主掛金)。

会社からの拠出掛金は、全額が損金計上できます。

企業負担が比較的少なく、中小企業や小規模企業でも導入しやすい制度ですが、従業員のうちiDeCoの加入者のみが対象となる点には注意が必要です。


中小企業退職金共済(中退共)

中小企業退職金共済(中退共)」とは、その名前のとおり、中小企業向けの共済型退職金制度です。

掛金は全額を事業主が負担しますが、損金算入が可能であるほか、掛金の一部については国からの助成が出ます。

ただし、原則として従業員全員が加入しなくてはいけないほか、経営者や役員は加入不可です。

一度決めた掛金の減額が極めて難しいことや、死亡退職金の準備には不向きといった難点もあります。

導入負担は少ない分、ほかの退職金制度にはないデメリットも少なくないため、会社に合った退職金制度であるかどうかの見極めは慎重にしましょう。


小規模企業共済

小規模企業共済」とは、中小企業退職金共済(中退共)よりもさらに少人数の企業向けに用意された共済型退職金制度です。

フリーランス(個人事業主)や自営業者が、自身や役員のために退職金を備えられます。

加入対象者は会社ではなく個人となり、掛金は全額が所得控除の対象です。

デメリットも比較的少ないため、退職金の代わりとして準備を進めたいフリーランス(個人事業主)や自営業者には、おすすめです。


特定退職金共済制度

特定退職金共済制度」とは、商工会や一般社団法人などが、所轄税務署長の承認を受けたうえで運営する共済型退職金制度です。

原則として従業員全員が加入必須であり、経営者や役員は加入不可です。掛金は全額を事業主が負担し、そのすべてを損金算入できます。

そのほか一度決めた掛金の減額が極めて難しいことも含め、大まかな仕組みは中小企業退職金共済(中退共)に似ていますが、特定退職金共済制度は導入要件に事業規模が含まれません

小規模企業や中小企業から、大企業まで、幅広い企業が利用できる制度です。

なお、似た名前の制度として、「建設業退職金共済制度(建退共)」「清酒製造業退職金共済制度(清退共)」「林業退職金共済制度(林退共)」の3種類を含む「特定業種退職金共済制度(特退共)」がありますが、こちらと特定退職金共済制度は別種であるため、ご注意ください。

退職金制度を導入するメリット

退職金制度を導入するメリットは、主にこちらの4つです。

  • 求職者に対して労働条件のよさをアピールできる
  • 従業員の勤続意欲を高められる
  • さまざまなコストを抑えられる
  • 早期退職を円滑に勧められる

それぞれの詳細を以下で確認しましょう。

メリット①:求職者に対して労働条件のよさをアピールできる

退職金の有無は、求職者にとって重要な検討ポイントです。

退職金制度が充実していればしているほど、労働条件がよく、長く勤めやすい会社であることをアピールできます。
結果として、求人に対する応募者の増加や、応募者の質の向上などが期待できるでしょう。

メリット②:従業員の勤続意欲を高められる

退職金は勤続年数や加入年数に応じて給付されるものであるため、退職金制度があることは、「長く勤め続けよう」という従業員のモチベーションにつながります。

優秀な人材の定着には、欠かせません。

また、金額が役職に応じて変動する制度設計であれば、従業員の向上心を高められ、業績アップを見込めるでしょう。

メリット③:さまざまなコストを抑えられる

退職金制度として企業年金制度や退職金共済制度を利用する場合、会社負担の掛金は全額が損金扱いとなり、節税効果を得られます。

また給与支払いでは法定福利費が発生するのに対し、退職金は発生しません。

給与を上げるよりも退職金制度を整えることが、人件費負担の少ない勤続意欲を高める方法になり得るでしょう。

メリット④:早期退職を円滑に勧められる

退職金制度を整備しておくことは、早期退職をはじめとした雇用調整に役立てられます。

昨今では新型コロナウイルス感染症の影響を受け、大手企業でも早期退職を募集する会社が多く見られましたが、会社の経営において不測の事態はいつでも起こり得ます。

退職金制度を整え、万が一のときに備えておくことは大切でしょう。

退職金制度を導入するデメリット

退職金制度の導入には多くのメリットがある反面、こちら2つのデメリットもはらんでいます。

  • 制度の運用にランニングコストがかかる
  • 導入後の廃止はまず難しい

デメリットについても、詳細を確認しましょう。

デメリット①:制度の運用にランニングコストがかかる

退職金を用意するためには、内部保留にしろ、企業年金制度や共済制度を利用するにしろ、一定のランニングコストがかかります。

企業規模や経営状態に見合わない制度を利用しては、経営を圧迫してしまいかねません。

デメリット②:導入後の廃止はまず難しい

想定以上に経営が圧迫されたからといって、一度導入した退職金制度を廃止することはまず難しいでしょう。
さまざまな手続きや承認が求められるほか、加入者から大きな反感を買うことは間違いありません。

過去には、会社都合による一方的な退職金制度の廃止により裁判沙汰になっているケースもあります。
裁判沙汰とはいかないまでも、信頼関係が破綻することで多くの従業員が離職し、経営難となるケースも考えられるでしょう。

退職金制度を導入する際には、経営プランニングをしっかりとしたうえで、自社に合った退職金制度を選別することが大切です。

主要退職金制度の比較とおすすめ制度

上記で紹介しました主要退職金制度の特徴や概要をまとめました。まずはこちらの比較表をご確認ください。

はぐくみ企業年金 企業型確定拠出年金 中小企業退職金共済制度 小規模企業共済
種別 確定給付企業年金 確定拠出年金 退職金共済 退職金共済
任意加入 可能 可能 全員加入 (対象は従業員のみ)
(対象は経営者/役員)
加入年齢 70歳未満 70歳未満 制限なし 制限なし
加入制限 役員も拠出可 役員も拠出可 役員は拠出不可 小規模企業の経営者又は役員
税制優遇 有り 有り 有り 有り
社会保険料 軽減可 (※1) 軽減可 (※2) 軽減不可 軽減不可
掛金拠出 会社の実質的な負担抑制  (※1) 会社が負担 (※2) 会社が負担 加入者が負担
拠出金上限/月 1,000円~給与の20%  (上限40万円) 1,000円~55,000円 5,000円~30,000円の16段階 (※3) 1,000~70,000円の範囲
運用 基金が掛金を運用

加入者が掛金を運用

機構(※4)が資産管理・運用 機構(※4)が資産管理・運用
受給額 運用成績により変動しない

運用成績により変動する

運用成績により変動しない 運用成績により変動しない
受取り 一時金又は年金/ 退職時、休職時、 育児・介護休業時にも受取り可能 一時金又は年金/ 但し、原則60歳以上に制限 一時金又は分割払い/ 退職後に受取り可能 一時金又は分割払い/ 退職後に受取り可能
※1:「選択制(既存の給与の一部を前払い退職金に変更し、従業員ひとり一人がその前払い退職金の受取り方を選択できる制度)」による効果です。はぐくみ企業年金は選択制の採用を前提としています。
※2:「選択制」を採用した場合、軽減できることがあります。
※3:パートタイマーなど短時間労働者の場合、特例掛金月額として2,000円から可能になります。
※4:ここでは「独立行政法人 勤労者退職金共済機構」または「独立行政法人 中小企業基盤整備機構」を「機構」といいます。

各主要制度についての特徴やポイント

はぐくみ企業年金」は、確定給付企業年金に分類される企業年金制度です。
定年退職後だけではなく、通常の「退職時」や「休職時」などにも受給できる点が特徴で、とくに加入者(従業員)に好まれる仕組みといえそうです。
また、経営者や役員層の方も加入できる上に、掛け金の範囲が幅広いのも特徴で、ほかの制度との併用も可能です。

企業型確定拠出年金(企業型DC)」は、個人型確定拠出年金のiDeCo(イデコ)と同様、確定拠出年金に分類される企業年金制度です。
給付の受け取りは60歳以降運用は加入者自身が行い金融についてのリテラシーも必要運用成績次第で資産の増減が生まれるといった特徴があります。

中小企業退職金共済制度(中退共)」は、従業員数や資本金に制限があるためいわゆる中小企業向けの退職金制度です。
加入対象は従業員のみであることや従業員全員の加入が必須になるといった点が特徴的です。

それぞれの制度の詳細については、下記記事も参照ください。

参考リンク

1Pで分かるはぐくみ企業年金をみる

企業型確定拠出年金の記事をみる

中小企業退職金共済の記事をみる

おすすめの制度は「はぐくみ企業年金」

はぐくみ企業年金は、現在、導入企業や加入者が急増している注目の退職金制度です。
選択制などの制度設計により、会社負担を少なく始められるなど、従業員、経営者、会社それぞれにメリットが生れるとてもおすすめの制度です。

まとめ記事で11の選択肢を紹介

こちらのまとめ記事で、退職金制度の選択肢を11件まとめて紹介しています。
他の制度のメリットやデメリットを体系的に比較・検討することができます。

 

※こちらの記事は2023年3月時点の情報を参照の上、執筆しております。
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