退職金制度特集

小規模企業共済の基礎知識とメリット/デメリット

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主にフリーランス(個人事業主)や自営業者など、小規模企業経営者向けの退職金制度として「小規模企業共済」という制度があります。

小規模企業共済は、掛金が全額控除の対象になるなど節税効果がある一方、加入期間が20年以下の場合、元本割れをしてしまうなどのデメリットもあります。

そこでこの記事では、小規模企業共済の概要やメリット、デメリットについて紹介していきます。

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小規模企業共済の概要

小規模企業共済は、フリーランス(個人事業主)や自営業者など、小規模企業の経営者や役員が廃業や退職に備える共済制度で、1965年に発足した制度です。「小規模企業経営者の退職金制度」ともいわれています。

会社としてではなく個人として加入するものですが、掛金を積み立てていくことで、廃業や退職時、引退時にこれまでの掛金に応じた共済金を受け取ることができるようになります。

例えば、廃業など法人を解散した場合には「共済金A」、病気や怪我といった理由や65歳以上で役員を退任した場合には「共済金B」、これら以外の理由で退任した場合には「準共済金」を受け取れるようになります。

運営は、独立行政法人「中小企業基盤整備機構」(中小機構)が行っています。

小規模企業共済の加入対象者

小規模企業共済には、以下の条件に該当すれば加入することができます。
フリーランス(個人事業主)や自営業者など、小規模企業の経営者または役員が加入できる制度です。

  1. 建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員
  2. 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員
  3. 事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
  4. 常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
  5. 常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
  6. 上記「1」と「2」に該当する個人事業主が営む事業の経営に携わる共同経営者(個人事業主1人につき2人まで)

※参照:独立行政法人 中小企業基盤整備機構公式サイト

加入までの手続き

小規模企業共済への加入手続きは、加入する方の立場や、加入手続きを行う窓口によって手続きが異なりますが、概ね以下の手順になります。

  1. 必要書類を入手
  2. 書類へ記入
  3. 窓口へ提出
  4. 中小機構からの書類の受け取り

必要書類について

加入する方の立場によって必要となる書類が異なり、大きく、個人事業主の場合法人(株式会社など)の役員の場合共同経営者の場合の3つに分かれます。

個人事業主の場合には、確定申告書の控え(税務署受付印があるものや受信通知があるもの)が必要となり、法人(株式会社など)の役員の場合には、履歴事項全部証明書(商業・法人登記簿謄本/交付後3ヶ月以内のもの)など役員登記がされていることが確認できる書類が必要となります。

詳しくは、独立行政法人 中小企業基盤整備機構公式サイトのこちらのページを参照ください。

窓口へ提出について

小規模企業共済への加入手続きは、中小機構が業務委託契約を結んでいる団体または金融機関の窓口で行います。
加入手続きを行う窓口によって手続きが異なり、郵送による手続きはできません。
初回の掛金を現金で支払う場合は、払込区分(1か月、半年、1年)に応じた金額を持参します。

小規模企業共済の掛金について

掛金は、月額1,000円~70,000円の範囲(500円単位)で自由に選択することができます。
また、支払った掛金は全額所得控除の対象になります。

掛金の納付方法は、預金口座振替での支払いとなり、「月払い」「半年払い」「年払い」の3つから選択することができます。
掛金の前納も可能で、前納の場合、一定割合の前納減額金を受け取ることができます。

企業や事業主にとってのメリット

経営者や役員、個人事業主が、個人として加入し積み立てていく制度のため、導入企業や法人としてのメリットはありません。

加入者にとってのメリット

加入者にとってのメリットは、主に次のようになります。

メリット1:積み立てた掛金が全額所得控除の対象になる

積み立てた掛金は全額所得控除の対象になり、掛金の分には所得税が課税されません(年間で最大84万円)。
また、掛金は月額1,000~70,000円の範囲で、500円単位で設定することができます。
ただし、減額する場合には注意点があるため、後述のデメリットの項目も参照ください。

なお、独立行政法人 中小企業基盤整備機構公式サイトのこちらのページより加入シミュレーションを行うことができます。

メリット2:共済金の受け取りの際(解約時)、税制優遇が適用される

小規模企業共済は、共済金の受け取り時(解約時)も節税が可能になります。
例えば、「共済金A」の場合(法人を解散した場合)や、「共済金B」の場合(病気や怪我で役員を退任した場合や65歳以上で役員を退任した場合)で共済金を受け取る場合、「退職所得」または「公的年金等の雑所得」扱いとなり、税負担を軽減することができます。

メリット3:7つの貸付制度を利用できる

契約者は、「一般貸付制度」や「緊急経営安定貸付け」、「傷病災害時貸付け」など、7つの各種貸付制度を活用することができます。
いずれも無担保・保証人不要で、利率は年0.9%~1.5%。借入期間は借入金額に応じて最大60ヵ月となっています(延滞すると年率14.6%の利子が発生します)。

  • 一般貸付
  • 緊急経営安定貸付
  • 傷病災害時貸付
  • 福祉対応貸付
  • 創業転業時・新規事業展開等貸付
  • 事業承継貸付
  • 廃業準備貸付

小規模企業共済のデメリット

小規模企業共済に加入した場合のデメリットは、主に次の通りです。

デメリット1:約20年未満で解約すると、掛金の全額が返ってこない(元本割れになる)

掛金の納付月数が240カ月(20年)未満で任意解約した場合、これまでの掛金合計額より少ない給付額となり、元本割れが発生してしまいます。

また、加入期間(掛金納付月数)が240カ月以上の場合でも、増額や減額など途中で掛金を変更した場合についても、任意で解約したときに受け取れる解約手当金は、これまでの掛金合計額を下回ってしまうケースがあります。

デメリット2:掛け金の減額は可能だが注意が必要

掛金の減額は所定の手続を済ませれば可能ですが、減額した差額分については、その後全く運用されずに放置されることになります。

仮に、その分を解約して「解約手当金」を受け取ろうとしても、加入後約20年以上経たなければ掛金総額より目減りしてしまうため、どちらも損をしてしまうことになります。

そのため、後に減額してしまうことにならないよう、加入開始のときから無理のない掛金を設定する必要がありそうです。

デメリット3:手続きがやや面倒

オンラインでできる手続きがほとんどなく、ネットバンクなどにも対応していない点もややデメリットでありネックポイントになるかもしれません。

他の制度や選択肢は? おすすめ退職金制度のご案内

こちらの記事で、小規模企業共済以外の選択候補となる、おすすめの退職金制度をまとめてご紹介しております。合わせてご確認ください。

企業型確定拠出年金 中小企業退職金共済 はぐくみ企業年金
根拠法 確定拠出年金法 中小企業退職金共済法 確定給付企業年金法
任意加入 可能 全員加入 可能
加入年齢 70歳未満 制限なし 70歳未満
加入制限 役員も拠出可 役員は拠出不可 役員も拠出可
税制優遇 有り 有り 有り
社会保険料 軽減可 (※1) 軽減不可 軽減可 (※2)
掛金拠出 会社が負担 (※1)
(会社負担分は損金計上可)
会社が負担
(会社負担分は損金計上可)
会社の実質的な負担抑制 (※2)
拠出金
上限/月
1,000円~55,000円
※iDeCoと併用の場合、上限額が変わります
5,000円~30,000円の16段階 (※3) 1,000円~給与の20% (上限100万円)
運用 個人が資産を運用 機構(※4)が資産管理・運用

基金が資産を運用

受取り 一時金又は年金/
但し、原則60歳以上に制限
一時金又は分割払い/
退職後に受取り可能
一時金又は年金/
退職時、休職時、
育児・介護休業時にも受取り可能
※1:本来、事業主が負担する掛金を、給与から切り出す「選択制」を採用して従業員が負担した場合は、軽減できる場合があります。
※2:はぐくみ企業年金は「選択制」の採用を前提として掛金拠出します。
※3:パートタイマーなど短時間労働者の場合、特例掛金月額として2,000円から可能になります。
※4:ここでは「独立行政法人 勤労者退職金共済機構」のことを「機構」といいます。

おすすめは「はぐくみ企業年金」

はぐくみ企業年金は、現在、導入企業や加入者が急増している注目の企業年金・退職金制度です。
選択制などの制度設計により、掛金拠出の会社負担を抑制できるなど、従業員、経営者、会社そえぞれにメリットが生れるとてもおすすめの制度です。

まとめ記事で11の選択肢を紹介

こちらのまとめ記事で、退職金制度の選択肢を11件まとめて紹介しています。
他の制度のメリットやデメリットを体系的に比較・検討することができます。

 

※こちらの記事は2022年6月1日時点の情報を参照の上、執筆しております。
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