退職金制度特集

特退共とは? 中退共との違いについても解説

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特退共とは、正式名称は「特定業種退職金共済」といいます。特定の業界(建設業、清酒製造業、林業)において、現場で働く従業員のために作られた退職金制度です。

しかし、「特定退職金共済」や「中退共(中小企業退職金共済)」といった似た名前の制度が複数あるため、混同する方も少なくありません。

そこで本記事では、特定業種退職金共済(特退共)を中心に解説するほかに、特定退職金共済や中退共(中小企業退職金共済)についても分かりやすくまとめました。

「それぞれの制度の違いを理解したうえで自社に合う制度を導入したい」と考えている経営者層の方は、ぜひご一読ください。

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特退共(特定業種退職金共済)とは?

特退共(特定業種退職金共済)とは、国が手掛ける退職金制度のひとつです。仕事柄、どうしても不安定な要素が多い業界で働く従業員のために、福祉を充実させる目的で作られました。

特退共(特定業種退職金共済)には、以下3つの種類があります。

  • 建設業退職金共済制度(建退共)
  • 清酒製造業退職金共済制度(清退共)
  • 林業退職金共済制度(林退共)

それぞれ制度名の頭にあるように、建設業・清酒製造業・林業といった特定業種を営む事業主のみが契約できます。被共済者は従業員であり、掛金納付者は事業主(※)です。

(※)ひとり親方の場合は、任意組合を結成もしくは加入することで契約可能

特退共(特定業種退職金共済)のメリットは、退職金の支払いタイミングが業界をやめたときであることです。特退共の加入事業所であれば、全国どこへの転職であっても、掛金が通算されます。

加入可能な従業員の幅も広く、国籍や職種、給与形態(日給・月給・出来高)は不問です。

特退共(特定業種退職金共済)を導入した事業主の元であれば、従業員は安心感を持って働けるでしょう。

また、掛金は全額を損金扱い(個人企業は必要経費扱い)にできるため、事業主にとっては節税にもつながります。

建設業退職金共済制度(建退共)とは?

建設業退職金共済制度(建退共)とは、建設現場で働く従業員向けの退職金制度です。

導入可能な事業主 業種が建設業であること(兼業も可)
対象となる従業員 建設業の現場で働く人ほぼすべて(職種や給与形態など不問)

従業員の就労に対し、1日単位で320円の掛金を納付します。
「1日=8時間以内」が基本です。8時間を超えた分や、深夜作業分は規定に従って追加しましょう。

中小企業(※)の場合は、新たに被共済者となった従業員の掛金に関して、50日分(合計1万6,000円分)の助成を国から受けられます。

(※)資本か出資額が3億円以下、または常時雇用の従業員が300人以下の規模

また、建設業退職金共済制度(建退共)を活用している事業主は、「公共工事の入札契約における経営事項審査が有利になる」といったメリットもあります。

詳細は、以下の記事もご覧ください。

清酒製造業退職金共済(清退共)とは?

清酒製造業退職金共済(清退共)とは、清酒製造の蔵元で働く従業員向けの退職金制度です。

導入可能な事業主 業種が清酒製造業であること(兼業も可)
対象となる従業員 清酒製造業の蔵元で働く人ほぼすべて(職種や給与形態など不問)

中小企業(※)の場合は、従業員の就労に対し、1日単位で300円の掛金を納付します。

(※)資本か出資額が3億円以下、または常時雇用の従業員が300人以下の規模

新たに被共済者となる従業員1人につき、60日分(1万8,000円分)の掛金助成を国から受けられます。

林業退職金共済(林退共)とは?

林業退職金共済(林退共)とは、林業現場で働く従業員向けの退職金制度です。

導入可能な事業主 業種が林業であること(兼業も可)
対象となる従業員 林業の現場で働く人ほぼすべて(職種や給与形態など不問)

中小企業(※)の場合は、従業員の就労に対し、1日単位で470円の掛金を納付します。

(※)資本か出資額が3億円以下、または常時雇用の従業員が300人以下の規模

新たに被共済者となる従業員1人につき、62日分(2万9,140円分)の掛金助成を国から受けられます。

特定退職金共済

「特定退職金共済」とは、所得税法施行令 第73条に規定される「特定退職金共済団体」が運営する、共済型の退職金制度のことをいいます。

特定退職金共済団体とは?

特定退職金共済団体とは、「退職金共済事業を主としていることを示す要件」を満たしており、かつ税務署長から認可を受けた組織や法人のことを指します。(参照:所得税法施行令 第73条

  • 特別区を含む市町村
  • 商工会議所
  • 商工会
  • 商工会連合会
  • 都道府県中小企業団体中央会
  • 一般社団法人
  • 一般財団法人 など

特定退職金共済の具体的な制度

特定退職金共済は、特定退職金共済団体として承認を受けた各地の商工会議所や商工会連合会などが運営を担っています。そのため、具体的な制度内容は、制度によって異なります。

以下は、特定退職金共済を運営する団体の一例です。
具体的な内容を知りたい方は、各団体のWebサイトも参考にしてみてください。

団体名 参考ページ
東京都商工会議所 https://www.tokyo-cci.or.jp/kyosai/tokutaikyo/
京都府商工会議所連行会 https://www.kyo.or.jp/maizuru/02_kyousai/kyosai_tokutai.htm
大阪商工会議所 https://www.osaka.cci.or.jp/Jigyou/Kyousai_Hoken/taishokukin.html
全国中小企業共済財団 https://www.zenkyosai.or.jp/pdf/S6.pdf

https://www.zenkyosai.or.jp/

東法連特定退職金共済会 https://www.tohoren-tokutaikyo.or.jp/

「特退共」と「中退共」の違い

「中退共」の正式名称は、「中小企業退職金共済」といいます。
その名前のとおり、中小企業向けに作られた制度であることから、導入可能な企業の条件として、常用従業員数や資本金・出資金額の上限が定められているのが特徴です。

特退共(特定業種退職金共済)とは違い、多くの中小企業が導入できます。

導入可能な企業 中小企業全般(※業種別の規模条件は後述)
対象となる従業員
  • 従業員全般
  • 従業員給与部分を受ける使用人兼役員(原則、一般的な役員は加入不可)

ただし、中退共(中小企業退職金共済)は多くの特定退職金共済と同じように、原則すべての従業員を加入させる必要があります。
掛金の減額において、しなくてはいけない明確な理由や、加入者全員の同意が必要となる点も多くの特定退職金共済と同様です。

掛金額は、5,000円~30,000円の範囲で、16種類の選択肢が用意されています。
さらに短時間労働者用の特例掛金もあり、こちらは1,000円単位で2,000円~4,000円です。

掛金は、事業主が全額負担し、損金または必要経費として取り扱えます。以下2パターンの助成金もあります。

  • 新たに導入した企業には、4ヵ月目から1年間にわたり、掛金月額の2分の1を助成(上限5,000円)
  • 特例掛金加入者は、上記に300円~500円の追加助成

そのほか詳細は、以下の表や記事もご覧ください。

■中退共(中小企業退職金共済)を導入できる企業
業種 条件
一般業種(製造業・建設業等) 常用従業員数300人以下、または資本金・出資金3億円以下
卸売業 常用従業員数100人以下、または資本金・出資金1億円以下
サービス業 常用従業員数100人以下、または資本金・出資金5,000万円以下
小売業 常用従業員数50人以下、または資本金・出資金5,000万円以下

「特退共」など3つの制度の比較

特退共、特定退職金共済、中退共の主な違いは、下表をご覧ください。

特退共
(特定業種退職金共済)
特定退職金共済 中退共
中小企業退職金共済)
運営 独立行政法人 勤労者退職金共済機構 商工会や商工会議所など 独立行政法人 勤労者退職金共済機構
導入対象 建設業や清酒製造業、林業を営む事業主 特定退職金共済団体に該当する組織や法人 業種により条件が異なる
助成金 有り 原則なし 有り

まず運営元について、特退共と中退共は同じですが、特定退職金共済は異なります。

このような差から生まれる大きな違いは、助成金のある・なしでしょう。特定退職金共済には、国からの助成がないため、導入時の負担はどうしても大きくなってしまいます。

一方、特退共の助成は、被共済者が増えるごとに受けられるので、事業規模を問わずに導入しやすいでしょう。
建設業、清酒製造業、林業における現場従業員向けの退職金制度を検討しているのなら、特退共はおすすめです。

業種上、特退共を選べないのであれば、まずは中退共を検討するのが無難でしょう。

また、昨今は退職金制度の選択肢がとても増えています。国や自治体が手掛ける制度は、設計面での自由度の低さが難点です。

「より自社に合ったものを選びたい」や「自社ならではの制度設計にして、競合他社よりも魅力度を高めたい」と考えているのなら、そのほかの退職金制度とも比較および検討をおすすめします

合わせて検討したい「おすすめ退職金制度」とは?

おすすめの退職金制度と、さまざまな退職金制度について紹介しているおすすめ記事を紹介します。

中小企業も導入できる退職金制度

中小企業も導入できる退職金制度として、「はぐくみ企業年金」「企業型確定拠出年金」「中小企業退職金共済」の3つを紹介します。
まずは、下表をご覧ください。

主要退職金制度の比較

はぐくみ企業年金 企業型確定拠出年金 中小企業退職金共済
根拠法 確定給付企業年金法 確定拠出年金法 中小企業退職金共済法
任意加入 可能 可能 全員加入
加入年齢 70歳未満 70歳未満 制限なし
加入制限 役員も拠出可 役員も拠出可 役員は拠出不可
税制優遇 有り 有り 有り
社会保険料 軽減可 (※1) 軽減可 (※2) 軽減不可
掛金拠出 会社の実質的な負担を抑制 (※1) 会社が負担 (※2)
(会社負担分は損金計上可)
会社が負担
(会社負担分は損金計上可)
拠出金 上限/月 1,000円~給与の20% (上限40万円) 1,000円~55,000円 ※iDeCoと併用の場合、上限額が変わります 5,000円~30,000円の16段階 (※3)
運用

基金が資産を運用

加入者が資産を運用 機構(※4)が資産管理・運用
受給額 運用成績により変動しない 運用成績により変動する

運用成績により変動しない

受取り 一時金又は年金/ 退職時、休職時、 育児・介護休業時にも受取り可能 一時金又は年金/ 但し、原則60歳以上に制限 一時金又は分割払い/ 退職後に受取り可能
※1:はぐくみ企業年金は「選択制」の採用を前提として掛金拠出します。
※2:本来、事業主が負担する掛金を、給与から切り出す「選択制」を採用して従業員が負担した場合は、軽減できる場合があります。
※3:パートタイマーなど短時間労働者の場合、特例掛金月額として2,000円から可能になります。
※4:ここでは「独立行政法人 勤労者退職金共済機構」のことを「機構」といいます。

おすすめは「はぐくみ企業年金」

はぐくみ企業年金は、現在、導入企業や加入者が急増している注目の企業年金・退職金制度です。
選択制などの制度設計により、会社負担を少なく始められるなど、従業員、経営者、会社それぞれにメリットが生まれるとてもおすすめの制度です。

まとめ記事で11の選択肢を紹介

こちらのまとめ記事で、退職金制度の選択肢を11件まとめて紹介しています。
他の制度のメリットやデメリットを体系的に比較・検討することができます。

 

※こちらの記事は2024年9月時点の情報を参照の上、執筆しております。
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