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中小企業退職金共済(中退共)の加入条件と社長・役員の加入可否|事業主からのよくある質問に回答

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本記事では、中小企業退職金共済(中退共)の加入条件について、分かりやすく解説します。加入を検討されている方からよくある質問にも、回答しています。疑問や悩みを抱えているのなら、ここで全て解消しましょう。
中小企業退職金共済(中退共)は国の退職金制度であるため、安心感が高く、導入を検討する事業主の方は多いでしょう。

しかし、制度の特性上、一定の加入条件や留意事項があります。導入を検討される際は、自社の状況や従業員のニーズに合わせて、制度の仕組みや考慮すべき点を十分に理解することが大切です。本記事では、加入条件について分かりやすくまとめているほか、加入を検討中の方から寄せられることの多い質問に回答しています。
企業にとってのメリット・デメリットだけでなく、従業員にとってのメリット・デメリットについても触れているので、「従業員目線での退職金制度導入」を考えているのであれば、本記事をぜひお役立てください

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そもそも中小企業退職金共済(中退共)とは

中小企業退職金共済(中退共)は、財政状況が厳しい中小企業であっても退職金制度を導入・運営できるようにするため、1959年に誕生しました。運営主体は、「独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部(中退共)」です。

中小企業退職金共済法を基に設計されています。かつ掛金は、法人であれば損金算入可能、個人事業主であれば必要経費として全額非課税となります。

国からの助成もあります。導入する際の安心感は、特に強い制度だといえるでしょう。

ただし、以下のような注意点も理解する必要があります。

  • 加入対象の従業員は全員加入させなくてはいけない
  • 掛金の減額が難しい
  • 加入期間によっては退職金が支払われない恐れがある

まず、一部の例外を除き、従業員は全て加入が必須です。従業員が多ければ多いほど、掛金の負担は増えます。

そのうえ掛金を途中で減額するには、被共済者の同意+厚生労働大臣の認定書が必要です。いくらの掛金が妥当であるかは、慎重に検討を重ねましょう。

また、掛金納付月数が11カ月以下の被共済者の掛金は掛け捨てとなり、退職金は支給されません。12カ月~23カ月の場合は支給されますが、その金額は掛金総額を下回ります。
掛金総額の10割が退職金として支給されるのは、掛金納付月数24カ月(2年)以上の被共済者です。さらに43カ月(3年7カ月)以上になると、運用利息分の加算があり、掛金を上回る退職金の支給となる可能性があります。

掛金納付月数を問わずに退職金が支給される制度と比較すると、中小企業退職金共済(中退共)は、従業員にとってリスクが感じられるでしょう。

参考:退職金計算の方法・考え方について(2.掛金納付月数と退職金額の関連)

中小企業退職金共済(中退共)に加入できる企業の条件(共済契約者)

中小企業退職金共済(中退共)の契約が可能な企業は、下表の通りです。

業種 従業員(常時雇用者) 資本金または出資の総額
一般業種(製造・建設業等) 300人以下 3億円以下
卸売業 100人以下 1億円以下
サービス業 100人以下 5,000万円以下
小売業 50人以下 5,000万円以下

出典:中退共制度にはどのような企業が加入できますか?|Q&A(よくあるご質問)|中小企業退職金共済事業本部(中退共)

業種によって、中小企業とみなされる従業員数や資本金(または出資)の金額が異なります。

なお、個人事業主も従業員(常時雇用者)を雇っているのであれば、加入可能です。

もしも契約中に加入条件を満たさなくなった場合は、一定の条件を満たすことで退職金制度を運営する団体(資産管理運用機関・基金または特定退職金共済団体)に引き継ぐこともできます。

引き継ぎ条件は以下の通りです。

  • 被共済者の同意があること
  • 一定の要件を備えた団体への資産移管の申出をすること
  • 移管するのは、解約手当金相当額の範囲内であること

出典:中小企業者でなくなった場合はどうすればいいですか?|Q&A(よくあるご質問)|中小企業退職金共済事業本部(中退共)

中小企業退職金共済(中退共)に加入してもらう従業員の条件(被共済者)

中小企業退職金共済(中退共)は、原則として従業員全員の加入が必須です。

ただし、以下に当てはまる従業員に関しては、加入・未加入を選べます。

  • 期間を定めて雇用される従業員
  • 季節的業務の雇用される従業員
  • 試用期間中の従業員
  • 短時間労働者
  • 休職期間中の者およびこれに準ずる従業員
  • 定年などで相当の期間内に雇用関係の終了することが明らかな従業員

引用:加入の条件|制度について|加入をご検討中の方(制度について知りたい)|中小企業退職金共済事業本部(中退共)

また、中小企業退職金共済(中退共)は、あくまで従業員のための制度です。事業主自身は被共済者になれません。役員も同様です。

事業主からよくある中小企業退職金共済(中退共)に関してのQ&A

ここからは中小企業退職金共済(中退共)について、事業主の方からよくある質問に回答します。

加入前に知っておきたい知識から、加入後に気になるポイントまであるので、ぜひお役立てください。

建設業退職金共済(建退共)とは?中退共との違いは何?

建設業退職金共済(建退共)と中小企業退職金共済(中退共)は、どちらも国が作った制度ですが、まず大きな違いとして対象者が異なります。

  • 建設業退職金共済(建退共)…建設現場で働く従業員のための制度
  • 中小企業退職金共済(中退共)…中小企業で働く従業員のための制度

中小企業退職金共済(中退共)は中小企業の従業員全般を対象にしているのに対し、建設業退職金共済(建退共)は建設業のみ、それも現場で働く従業員が対象です。

また、中小企業退職金共済(中退共)は企業を退職した際に支給されますが、建設業退職金共済(建退共)では業界をやめたときに支給されます。会社や事業所を変えた場合でも、建設業で働き続けている間は、掛金が通算可能なのです。

建設業退職金共済(建退共)でなぜこのような仕組みが取られているのかというと、建設現場で働く従業員は、一般よりも労働環境が不安定になりやすく、また雇用者に対しての立場が不利になりやすいためです。

なお、建設業退職金共済(建退共)は、特定業種退職金共済に含まれる制度です。ほかには、清酒製造業退職金共済(清退共)や、林業退職金共済(林退共)があります。

建設業退職金共済(建退共)について詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

建設業退職金共済(建退共)に加入できる法人の条件

建設業退職金共済(建退共)に加入できるのは、建設業を営む事業主全般です。業務内容は問わず、また兼業の場合でも構いません。

中小企業退職金共済(中退共)の掛金は誰がいつ払うのですか?

中小企業退職金共済(中退共)の掛金は、全額が事業主負担です。従業員による拠出は、一部であっても認められません。

掛金の支払い方法は、事業主指定の金融機関からの口座振替のみです。支払日は、毎月18日です。18日が金融機関の休業日と重なった場合は、翌営業日に回されます。

参考:掛金|制度について|加入をご検討中の方(制度について知りたい)|中小企業退職金共済事業本部(中退共)

中小企業退職金共済(中退共)の掛金の決め方はどのように決めたら良いですか?

毎月の掛金金額は、最低5,000円、最高3万円の範囲内で、以下16パターンからの選択式です。

5,000円 6,000円 7,000円 8,000円
9,000円 10,000円 12,000円 14,000円
16,000円 18,000円 20,000円 22,000円
24,000円 26,000円 28,000円 30,000円

また、パートタイマーやアルバイトなど、短時間労働者向けの掛金月額は別途用意されています。こちらは2,000円・3,000円・4,000円の3パターンです。

事業主はこれらの選択肢から、従業員ごとに設定できます。例えば、年齢や経験年数など、企業ごとに基準を決めておくと運用しやすいでしょう。

中小企業退職金共済(中退共)の退職金規程の例はありますか?

退職金規程を作成する際には、支給基準を明確に定めることが大切です。以下の項目を全て含めれば、抜け漏れのない規程を作りやすくなります。

  • 退職金の支給が何によって行われるのか(例:独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部との退職金共済契約によって)
  • 退職金の支給要件について
  • 従業員はどのタイミングで被共済者となるか(例:試用期間後の本採用時点)
  • 掛金月額の調整月ついて(例:毎年〇月)
  • 掛金納付を停止する要件について(例:休職期間が所定労働日数の〇以上)
  • 退職金を減額する要件について(例:懲戒解雇)
  • 退職金の計算方法について
  • 退職金の受け取り方について※本人の場合と遺族の場合
  • 規程改廃があることと、その際の要件(例:法改正や社会事情の変化など)
  • 規程の実施日
  • 規程実施前の在籍期間に応じた通算について(例:勤続年数に応じて通算する)

このほか、掛金月額の基準を示した別表も含めると良いでしょう。

中小企業退職金共済(中退共)のWebサイトには、退職金規程のひな型も用意されているので、こちらもぜひご参考ください。

社労士(社会保険労務士)やコンサルタントに作成およびアドバイスを依頼する方法もあります。

従業員の懲戒解雇があった際に中小企業退職金共済(中退共)の退職金減額をすることはできますか?

懲戒解雇の場合は、厚生労働大臣の認定を受けることで退職金を減額できます。ただし、掛金が返納されることはありません。

減額を希望する場合には、まず被共済者退職届にその旨を含め、中退共本部保全課まで送付しましょう。

さらに厚生労働省雇用環境・均等局勤労者生活課(船員の場合は地方運輸局)まで、必要書類(退職金減額認定申請書・退職金減額認定申請に係る被共済者の「退職事由」について)を送付し、厚生労働大臣の認定を受ける必要があります。

参考:懲戒解雇の場合には退職金を減額することができますか?|Q&A(よくあるご質問)|中小企業退職金共済事業本部(中退共)

「中退共」と「はぐくみ企業年金」の違い

中小企業が退職金制度を導入するのであれば、中小企業退職金共済(中退共)だけでなく、「はぐくみ企業年金」という選択肢もあります。違いを比較し、検討してみましょう。

中小企業退職金共済 はぐくみ企業年金
主な加入対象 中小企業 中小企業から大企業まで
任意加入 全員加入 可能
加入年齢 制限なし 70歳未満
加入制限 役員は拠出不可 役員も拠出可
社会保険料 軽減不可 軽減可 (※1)
掛金拠出 会社が負担 (会社負担分は損金計上可) 会社の実質的な負担抑制(※2)
拠出金 上限/月 5,000円~30,000円の16段階 (※3) 1,000円~基本給/役員報酬の20% (上限40万円)
運用 機構(※4)が資産を運用 基金が資産を運用
受取り 一時金又は分割払い/ 退職後に受取り可能 一時金又は年金/ 

退職時、休職時、 育児・介護休業時にも

受取り可能

※1:「選択制(既存の給与の一部を前払い退職金に変更し、従業員ひとり一人がその前払い退職金の受取り方を選択できる制度)」による効果です。
※2:はぐくみ企業年金は「選択制」の採用を前提として、従業員が前払い退職金から掛金拠出します。
※3:パートタイマーなど短時間労働者の場合、特例掛金月額として2,000円から可能になります。
※4:ここでは「独立行政法人 勤労者退職金共済機構」のことを「機構」といいます。

まず大きな違いとして、加入対象の企業が中退共は主に中小企業なのに対して、はぐくみ企業年金は中小企業から大企業まで幅広いです。

また、はぐくみ企業年金は「選択制確定給付企業年金」といって、※加入者の給与の一部を前払い退職金手当にできる仕組みを採用しています。法人からだけでなく従業員が前払い退職金から掛金拠出ができる制度のため、法人側の実質的な負担抑制につなげることができます。

※はぐくみ企業年金は加入者の給与の一部を退職金手当にできるのに加え、法人側から会社加算部分を設定することが可能です

まとめ

中小企業退職金共済(中退共)は、中小企業全般向けの制度ですが、業種ごとに加入条件が定められています。また被共済者となれるのは従業員のみで、役員は加入できません。

まずは、加入条件を満たしているかをよく確認しましょう。そのうえでメリットだけでなくデメリットも把握し、ほかの退職金制度と比較検討したうえで導入を決めるのが良いでしょう。

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