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「加速する少子化と保育経営の未来」【セミナーレポート】

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株式会社ベター・プレイスは、「ビジネスを通じて、子育て世代と子どもたちが希望を持てる社会をつくる。」という企業理念のもと、人々が「お金の心配なく」「自分らしく働ける」社会を目指しています。
この度、株式会社保育のデザイン研究所様と「加速する少子化と保育経営の未来」と題したオンラインセミナーを開催しました。当セミナーでは株式会社保育システム研究所 代表取締役 吉田正幸氏をお招きし、2023年の「子ども家庭庁」設立予定を控え、激変していく保育を取り巻く環境を概観し、新たに見えてきた課題と保育マネジメントについてお話をしていただきました。
幼稚園、保育園、こども園を運営される方のヒントに少しでもなるようにと思い、セミナーレポートを記事にいたしました。
(2022年1月19日オンラインセミナーの講演内容を文字起こし、記事化したものです。)
吉田先生のプロフィールはこちら

■保育経営の目的地とは?

はじめに今回のタイトル「加速する少子化と保育経営の未来」における「経営」というのは、いわゆる“お金の勘定”のことではなくマネジメントのことである、という理解をして頂いた上でお話を聞いて頂ければと思います。

まず、最初に押さえておきたいことは、保育あるいは子育て支援という営みを通して、子どもたちあるいは保護者をどういう素晴らしい世界に連れていくのかという目的地、ここを定めることが実は最も重要だということです。しかし、そこに無事に、安全安心快適にたどり着くためには、保育を上手に、的確に営んでいかなければいけない。当然そのためには保育の質が問われます。また、それを支える経営の質、保育環境の整備、職場環境の整備が大切と考えられます。
一方で少子高齢・人口減少社会に象徴される激動の中で、それに対応する形で保育の制度・政策も激しく動いていますし、これから更にまた動くだろうと予測されます

その一例が、恐らく来年中にはできるであろう「こども家庭庁」といったものをはじめとした、新たな動きへのつながりです。こうした全体の状況を俯瞰しながら、保育の質と経営の質を、コインの裏表という捉え方で考えていく必要があるだろうと思っています。

加速する少子化 について


昭和22年からの3年間で約800万人赤ちゃんが生まれました。一番多い年では約270万人が1年の間に生まれました。この3年間で生まれた800万人の赤ちゃんが、約25年経って800万の親世代になり、その膨大な親世代からまたたくさんの子供が生まれました。それが昭和46年からの4年間、毎年約200万人の赤ちゃんが生まれ、いわゆる第二次ベビーブームとなりました。

ベビーブーム世代が親世代になった時に次のベビーブームを起こすと考えれば、この第二次ベビーブームの4年間で生まれた約800万の赤ちゃんが、その後の晩婚化・晩産化により30代になった頃に、当然たくさん子供が産まれるということで、平成5~8年ぐらいに実は第三次ベビーブームが起きてもおかしくはなかったわけですが、実際にはベビーブームが起きるどころか、山が来るどころか谷が生じてしまいました。
第二次ベビーブームから30年ちょっと経った間に明らかに異変が起きたと考えられます。

▽なぜ少子化が進行しているのか

1.女性の就業率の向上などに伴う保育ニーズの増加
ベビーブームが起きなかった原因として、働く女性が増え非正規雇用など多様な働き方が非常に広がってきた。

2.地域コミュニティの希薄
もう一つの原因は、地域コミュニティというものがかなり希薄になり、どうしても子供を産み育てるということは孤立した中で大変な負荷のかかる営みになってきました。

このような様々な変化が生じた結果、第三次ベビーブームは幻に終わり、以後、少子化が加速していったということになります。その一つの大きな節目が平成元年の合計特殊出生率が1.57ということで、昭和41年の特殊な「丙午(ひのえうま)」という年の合計特殊出生率をいとも簡単に下回ったことにあります。それが翌年公表されて、そこから本格的な国を挙げての少子化対策が始まったわけです。

しかし、その平成元年の合計特殊出生率1.57の年に生まれた子供は実は125万人いたわけです。そして、その翌年以降国を挙げての少子化対策がさまざまに講じられたにも関わらず、一昨年1年間に生まれた子供は約84万人、そして昨年1年間の出生数は、おそらく今年の春・夏前に公表されるだろうと思いますが、まず間違いなく80万人を切って、70万人台になるだろうと言われています。(※ベター・プレイスによる注記:厚労省による速報値の発表では2022年の出生数84万2897人で過去最低を更新しました。)

つまり、平成元年の125万人以降、少子化対策をかなり打ったにも関わらず、125万人が70万人台に落ちるという結果から言えば、少子化対策はほとんど成果を生まなかった。やはり異常な状況が続いているのが現状です。

そして、恐らく少子化は更に加速をしていきます。そこに新型コロナウイルス感染症拡大がさらに拍車をかける、という大変厳しい状況に来ているということの実感を持っていただく必要があると思います。

幼稚園・保育園・認定こども園の利用状況と今後

この青い折れ線グラフ が保育所の入所児童で、赤い方が幼稚園の在園児ですね。これが平成10年にクロスしています。平成10年に初めて、戦後初めて保育所の園児数が幼稚園の園児数を上回った。以後、幼稚園は保育所の園児数を上回ることなく減り続けてきました。

一方、保育所が増え続けてきて、このクロスしたグラフと、共働き家庭と専業主婦家庭のグラフが実は重なります。専業主婦家庭が大幅に減っていき、共働き家庭が大幅に増えていき、1990年代半ばに逆転をし、以後共働き家庭が増え続けています。逆に専業主婦家庭は減り続ける。つまり、保育園や幼稚園の個別の努力の問題ではなく、子育てをする親家庭の就労状況が、教育保育施設の園児数に反映していると言っていいと思います。

▽認定こども園の増加により変化した保育

ただ、少し違う状況が生じたのが平成25年です。このグリーンに象徴される非常に右肩上がりのものが出てきました。これが認定こども園ですね。平成27年度の子ども・子育て支援新制度以降、認定こども園が毎年1000園超す勢いで増え続け、もういまや8000園をゆうに超えるというところまで来て、認定こども園の園児数の方が、すでに幼稚園の園児数よりも多いです。あるいは認定こども園の職員数の方が、幼稚園の職員数よりも多いという状況になり、ここから先、少子高齢・人口減少社会に突入していく中で、様々な教育保育施設等々がどう変わっていくのか。まさにここから先が混沌とした激動期に入るだろうという、そういうタイミングで「こども家庭庁」というものが恐らく動き、それが本当に適格な政策として機能するのかどうか、そこがこれから問われるという状況にあるわけです。

▽地域による女性就業率と保育所利用率の関係

一方で、母親の働き方が保育に影響していることは事実ですが、市町村別に見ていくと状況がかなり異なってきます。
神奈川県の女性就業率が72%前後となっており保育所の利用率も低い。働く女性が増えるほど保育所の利用率が上がる顕著な傾向があります。最も高いのが北陸三県をはじめ、あるいは島根県といったところですね。この地域は86%に近い女性就業率がある。

当然、保育所の利用率も高い。都道府県でこれだけ差があります。市町村でも大きな差です。問題は女性就業率が80%を超えて90%に迫ろうかという地域は、これ以上女性就業率は大幅に上がるということは予測されません。言い換えると、保育所の利用率はもうこれ以上は上がらないだろうということです。逆に少子化で子供が激減していきますから、そういう地域によって保育所の大幅な定員割れがもう避けられないと考えられます。

▽令和7年に待機児童はピークアウトの予想

一方で、女性就業率が低い地域は、概ね政令市を抱える大都市が非常に多いです。専業主婦家庭で保育所よりも幼稚園を利用する家庭が多いということで、特に政令市は保育所よりも幼稚園が多いです。とりわけ私立幼稚園が多い。ところが、そういう地域でさえ、現在、女性就業率がどんどん上がってきているので、当然、保育所の利用率は上がります。しかし、保育所は元々多くなく、幼稚園の方が多いぐらいだったので、そこで保育所が足りないということになり、待機児童がかなり発生するということになったわけです。その待機児童が発生する状況において保育供給を増やし、色んな形で保育の受け皿を増やしていきました。当然、順調に女性就業率も上がってきた。なお、女性就業率の上昇の勢いよりも恐らくこれからは子供の減る勢いの方が上回るので、国の予測でも令和7年度で保育所の利用はピークアウトするだろうという見通しが出されています。ごく少数一部の地域を除けば、もうあと数年で保育所利用についてもピークアウトをし、恐らくほとんどの地域で待機児童がいなくなり、待機児童が多かった地域でも定員割れの園が相当出てくると思われます。

板橋区においても、かつて500人を超えるような待機児童がいましたが、もう今は二桁しか待機児童がいません。東京23区でさえ、その地域の中によってはもう定員割れが見え始めました。そしてこれから大幅な定員割れが見込まれるという状況ですから、東京23区以外の地域においてはさらに厳しい状況が予想されます。そして少子化がさらに加速していくということは肝に銘じておく必要があるだろうと思います。

そしてこの図で表されているように、もう幼稚園の園児数よりも保育所の園児数の方が、3歳の段階からして多いということになりますので、保育園・認定こども園の割合はここからさらに大きく増えていくことが予想されます。

少子高齢人口減少社会における”保育”の課題からみえた新しい視点

子供をめぐる問題というのは、家庭地域社会を両方視野に入れながら捉えていかなければいけないし、この激動する状況の中で認定こども園や保育所あるいは幼稚園っていうのは、一体どのような役割や機能を果たせるのか、まさに厳しくそれが今問われ始めたと言っていいと思います。

▽少子高齢人口減少社会における保育の課題と役割

国を挙げて取り組んでいる少子化対策は、これまではどちらかと言うと減っている子供を食い止め、出生数を増やしたいという量的対応にかなり比重が置かれていました。社会保障制度では、現役世代が高齢世代を支えるというこの世代間での支えが大きな特徴ですが、問題は少子化によって子どもや若者、現役世代がどんどん減って、とても高齢世代を支えきれない。このままいけば社会保障制度は破綻し持続可能性を失います。それはなんとしても避けなければいけない。これは国家的な課題です。

当然、そこで一番単純な考えは支え手をやっぱり増やすしかないよねと、ということになるわけですが、平成元~2年の状況以降、30数年たっても子供は減り続け、支え手を増やすどころか支え手が減り続けているというのが現実です。もちろん、ここも何とかしなければいけません。

しかし、発想を変えると、単に支える人数を増やせば何とかなるのかと、いうこと自体を変えなきゃいけない。仮に反転構成できて、出生数が上がったとしても、その子供達が成長していくに従って、例えば不登校にどんどんなり、あるいは社会にも出ることができず引き籠っていたのでは、人数だけ増えても実際支え手にならないわけですね。

むしろそれよりも、仮に数が増えなかったとしても一人一人の子供達が、より健やかに心豊かにたくましく育ち、社会に有意な人材としてどんどん出ていけば、一人一人の支える力がしっかりしていれば、こちらの方がまだなんとかなるだろうと私は考えています。

そして何よりも支え手の数を増やすという少子化対策に保育の世界ではほとんど貢献できません。しかし、乳幼児期からの子どもたちのたくましい育ちを保証するということは、質の高い幼児教育、保育を展開しその子供達の保護者に対する充実した子育て支援を展開することによって、この支える力を高めることには保育の世界は十分貢献できる。むしろこちらの可能性の方が私は大きいだろうと考えていますので、この部分で我々は何ができるのか、どういう役割が果たせるのか、あるいは何が期待されているか、それにはどういう機能を高めればいいのか、というまさに今、そこをお考えいただきたい、と思います。

そしてもう一つ重要なポイントはこれから更にまだ徐々に働く女性、母親も増えていきますが、一方的に働く母親が増えるのかと言うとそんな単純な話ではありません。当然子育てには家庭には恐らく今以上に育児休業が普及充実をするでしょう。そうすると働いている方でも育児休業中は在宅で子育てしますね。あるいは、もちろん子供がある年齢になるまで仕事は控えるという方もいるでしょうし、あるいは仕事を続けなくてもえ就業状況の変化、あるいは勤務先の会社等の事情によって仕事を断念せざるを得ない方もいるでしょう。

つまり、その育児子育てに、どれだけ充実した支援をするかが、下支えとして今後極めて重要な意味を持ってくるだろうと考えられます。と同時にその方々は会社に行かず、地域にいるわけです。会社に行ってないですから。そうすると、その方々が今、疲弊してきている地域社会の支えと手という観点からも、もう一つ別の視点で活躍することが期待されます。

つまり、未就労者や育休取得者などへの充実した支援を通して、地域社会の持続可能性を高めるということと同時に、こういう一番支援の手が届いていない方々に光を当てることによって、そこから先の保育所・幼稚園・認定こども園へスムーズにつなげていくということで、より質を高めることにも貢献できるだろうと考えます。その両面で保育の世界は幼児教育保育と、それから地域子育て支援と、これをバラバラではなく、総合的に包括的に提供できるのか、ということが、次の時代の大きな課題になって来ると思います。

制度・政策を理解し、活用するためのヒント

保育政策というのは、近未来の子供の世界をどのような素敵なものにするのかということを目指すわけですから、近未来を実現する手立てです。そして、その政策を実際運用していく中で制度・仕組みが必要になります。制度・仕組みというのは政策の運用あるいは政策実現のためのツールに過ぎません。同じ制度であっても、使い方によって価値は変わります。現に、平成27年度から始まった子ども子育て支援新制度も、実施主体は市区町村とされていて、実は市区町村によってかなり運用の中身が違います 。とても同じ制度とは思えないくらい実は実態が違う、というのが現実になっていますので、そういう観点からも制度・仕組みの良し悪しはもちろん大事ですが、うまく使えばそれなりに活用して価値を生むことができる、というように発想を変えていただきたいです。

機能が接近してきた幼稚園と保育園・認定こども園

昨今、保育は社会の変化、ニーズに対応して機能が拡充、接近してきたと言っていいと思います。幼稚園の機能は従来型の幼稚園の機能だけではなく、預かり保育に象徴される保育所的な機能や子育て支援機能を高めてきました。

同様に保育所も、従来の保育所機能に加えて幼児教育機能をニーズに応じて高めていき、さらに子育て支援機能を高めてきた。その後互いの機能を総合して「認定こども園」というものになり、新制度の創設によって子ども財源を内閣に一元化することによって、あるいは新たな幼保連携型認定こども園というハイブリッドな第三の認可施設を創設することによって、当初の認定こどもの制度設計の不備を整備し、まさに幼保子育て支援の一体的な機能を持つことが可能になりました。そのため、こども園、保育所、幼稚園の機能はかなり似通ってきました。

認定こども園をここから先、制度的にどのように融合していくのか、いかないのか。より一体化が進むのか進まないのか。とりわけ「こども家庭庁」ができていった中で、そこがどう変化するのかしないのか。またここから先に次の大きな性能の見直しがどうなるかという課題が浮上するということになるわけです。

子ども・子育て支援新制度の全体像

子ども・子育て支援新制度(以下、新制度)について、国がこういう制度設計をしました。当初はこの一番左の黄色い部分とそれから右から二つ目の紫の部分、これが平成27年度の新制度の全体像でしたが、その翌年28年度にこの右端のいわゆる企業指導型保育事業というものが全く違う財源で加わってきました。

そして約2年前にはこの左から二つ目の薄いブルーで示されている幼児教育保育の無償化を実現することによって、新制度に移行してない幼稚園、あるいは認可外保育施設というものが保護者に対する保育料負担を無償化するということで、保護者に対する仕組みとしては新制度の仕組みを使って保護者に対する給付という形で実現したので、施設は新制度に移ってないのですが、その新制度に移っていない施設を利用しての保護者の保育料の無償化のために新制度の仕組みを使ったということで、実はここに出てきているということになったのですね。

▽市町村子ども・子育て支援事業計画との向き合い方

五年スパンの事業計画については、現在残念ながら今のところ文科省の幼稚園、幼児教育の機能はこども家庭庁に100%移すわけではない、ということになっていますのでの見通しが不透明ではありますが、今後一年先の課題だと言えます。また、これがその国の制度に基づいて全国の1,700前後の市町村が具体的な事業計画を立てて推進していきます。変化が激しい時代ですから五年を一期とするスパンで、この計画を見直しながら推進していくということで、すでに平成27年度からの第一期計画が終了し、今は第二期計画になっていますが、これも令和六年度いっぱいで終了します。早いところでは今年の後半から多くの市町村においては来年から第三期の事業計画の見直し検討に入るということになります。言い換えれば、今年から来年にかけて保育に携わる方々がわが町の子育て支援事業計画をより良いもの変えていくための働きかけが可能な時期ということになります。

▽令和7年からの事業計画で注意すべき点

五年の計画期間中にそれぞれどう変化していくのか、一般的には働いてないお母さんが働くようになるので0号認定(以下、0号)から3号認定(以下、3号)に移行する家庭が増えます。あるいは1号認定(以下、1号)だった家庭の専業主婦が家計を支えるために働きに出れば2号認定(以下、2号)に変わりますから、どちらかと言うと2号、3号の需要が上がっていきます。

それに対して十分な供給をするというのが市町村事業計画です。五年間で1号・2号・3号、あるいは0号の需要がどれぐらい変化をし、その変化に対してどれぐらい何を供給すればいいのか、それによる需要と供給のバランスをとる需給計画、これが市町村事業計画です。

2号3号を中心にはしていますが、簡単に言えばこれまでの市町村事業計画は膨らむ需要に対して供給も増やすということで来ました。次の令和7年度からの五年間の事業計画では多くの地域が令和7年にはもう保育所受け入れもピークアウトしていますので、どちらかと言うと需要が縮むことを前提にした事業計画になります。そうすると需要が縮んでいった時に供給を減らせるかと言うと、公立の保育所が多いところは、あるいは幼稚園公立が多いところは公立の施設を統廃合して、供給減らしてバランス取るということは可能でしょうが、私立民間の施設に対して市町村がやめろとは言えませんので、結果的には定員割れが生じるということになっていきます。

▽今までとは真逆のベクトルで考える事業計画

今までとはかなり方向の違う市町村事業計画になりますから、その中で私立民間施設が供給を多少なりとも縮小しながらも機能を高めそれぞれの地域で根を張って、自分の園の持続可能性を高めるか、また、自分の園の機能・質を高めることによって、その利用者に対していかに貢献していくのか、ということが問われます。恐らく今までとはかなり違うベクトルで市町村事業計画に向き合い、その中で自分の園の未来、あるいは持続可能性あるいは貢献度というものを考えていく必要があります。その時代が目前に来ている。あと二、三年でその方向性が決まる時期を迎えています。

「0号」認定の子どもから始まる一体性・一貫性を持った支援

その際に、もう一つ考えていただきたいことがありまして、子ども支援子育て支援制度が想定している就学前のすべての子ども・子育て家庭の支援になります。この図に入っているのが、すべての子ども・子育て家庭になりますが、制度になりますから線引きをしないといけない。それは子どもが3歳以上なのかそうでないのかで横に線が入り、保育が必要か必要でないかということで縦に線が入る図ができる。

「0号認定」とはなにか

左上の枠は子供が3歳以上で、長時間保育は必要ない、つまり幼児教育だけでいい、以前で言う幼稚園的利用ですね、いわゆる「中央認定こども 」ということになります。その右側が同じ3歳以上で例えば共働きの家庭、あるいは一人親家庭で親が一生懸命働いている、その間当然子供には長時間保育ということで2号認定の子ども、3歳未満であれば3号認定の子どもにということになります。

これは子ども子育て支援法十九条の一号条文で規定し、二号条文で規定し、三号条文で規定しているので条文の号数名前を取って1号、2号、3号と言っているわけですが、そうすると一番左下は主に3歳未満の保育施設を利用していない在宅子育て家庭の子どもということになります。

ここでは1号2号のもっと手前の全部共通部分なので私は「0号」と呼んでいますが、全ての子ども子育て家庭はここからスタートします。専業主婦家庭はここに、親子は三年間います。あるいは仕事子育てを両立して働いているお母さんの家庭は一年間育児休業を取れば、この0号に一年間います。半年間しか育休が取れない方は0号に半年います。その後、親の就労の有無、あるいは家庭の事情により子供が1号2号3号に分かれているということになります。

▽「0号認定」家庭にもっと光を

全部の出発点であり、全ての子どもの共通部分である「0号」にもっと光を当てなきゃいけない。そして親子が密着し、愛着形成しているこの重要な過程から集団保育の世界にいくことは、子供にすれば生活環境がガラッと変わるわけです。当然この0号の未就園状態から1,2,3号のどれに行くにしても子どもがストレスのないよう円滑連携を行うことが課題ですし、この「0号」段階の親が一番育児子育てで不安・負担感を高めて厳しい状況で子育てを頑張ろうとしている状態で、虐待もここでかなり発生してしまう。

そういう親・保護者に対して充実した子育て支援、単なる親の肩代わりの支援ではなく、親が親として育っていけるような、そして子供環境として、親が育つ理想に向けてどう手厚い支援ができるのかということが重要になります。これはパッケージで考えた方が良いです。

特段、特化して光を当てようともしなかった世界に、たまたま新制度があって認定こども園が「1,2,3号」の全ての機能を持ち、この「0号」についても子育て支援は義務必須機能というふうになったわけですけれども、しかし幼稚園だろうと保育園だろうと、この四つの箱パッケージで考えて、自分たちにどこまでその関連した機能が持て、あるいは関連したものと連携してカバーできるのか、という発想をしなければいけません。

そのことによって、この右側にある一体制度一貫性というその縦軸と横軸に象徴される子どもたちの発達の連続性や、生活の連続性を保証する機能を総合的に保証できるのかということは、実はこれから大変重要な課題になるし、そもそも子ども子育て支援新制度はそういうことをベースに制度設計されていたか、その制度設定にかなった機能を持つかどうか、ということは基本的に重要なことになるということになります。

子ども・子育て支援新制度に関する今後の課題

▽予算について

それから、これも駆け足でポイントだけお話をしておきます。まずお金予算に関連した制度の運用改善としては、例の3対1、6対1、20対1、30対1、と言われる職員配置基準。それから三・四・五歳児ひとクラス35人以下と言われる学級編成基準、これが長らくずっと放置されてきました。

しかし、本当に子どもが減っていく中で、どれだけこの職員配置基準や学級編成基準をいい方向に改善できるのか、極端に言うと一歳児の6対1を、例えば4対1とか、そこまで変えられるのか。あるいは幼稚園的利用の3歳児は依然として35人学級ですが、実態としてそんな園はないですね。

今、新制度は、運用上3歳児は15対1ができるようになっていますね。せめて3歳児の幼稚園的利用でも1クラス15人以下みたいにできるのかできないのか、それによって本当に子供が減った時に、子供が減っても基準を改善していれば、そこに手厚い職員を配置することになりますから、当然一番メインである人件費の給付はしっかりと担保されるということになりますので、園児は減っても園児が減ったほどには給付は減らない、そのためにはこういう職員配置基準や学級編集基準を良い方向にどこまで見直しができるのか、これが最大の課題であろうというふうに思っています。

▽運用上の人材確保

それから仕組み関連での運用上の課題ということで、大きいのは2号3号子供に関して言えば1日最大11時間までの保育標準時間と、8時間までの保育短時間、この二区分が設けられています。主にフルタイム就労、正規雇用の方の利用を見込んだ標準時間です。

パート・アルバイト・派遣契約社員といういわゆる非正規雇用の方を前提として保育短時間利用と、その二区分にしていたのですが、残念ながら幼児教育保育無償化によって、保育時間が長くても短くても3歳以上児の基本保育には無料ということになりましたので、当然利用者サイドも、どうせタダなら保育時間が長い方がいいよね、ということになりますので、結果的に単純に利用が減って相対的に標準時間利用が増えて、つまり結果として園児の平均在園時間が延びる傾向にあると言っていいと思います。

園児の在園時間が伸びるということは、当然それに配置する職員も長時間化しなきゃいけませんので、シフトを組むということがなかなか厳しくなり、ただでさえ人材確保が叫ばれている中で、子供の在園時間が長くなることによって職員の就業時間が長くなり、負荷が増すという状況、もっと言えば不必要な長時間利用、フリーライダーの問題を放置してもいいのかどうか、これは何か抑制する手立てはないのか、これが当面最大の課題になろうと思っています。

▽コロナによる影響と、待機児童問題解消を見据えての事業計画を

もう一つはもう先程お話しした通りで、待機児童問題がもう間もなくなることが予測されていますので、今までとは市町村の需給計画事業計画のベクトルが全く逆になっていきます。

これにどう対処するのかと同時に、本来は市町村の子供子育て会議が有効に機能するはずだったのですが、この二年近く新型コロナウイルス感染症の拡大によって、残念ながら多くの自治体で地方版子ども子育て会議がほとんど開かれなかった、あるいは開かれても書面開催というお茶を濁す形であって、会議の活性化が全然図られなかった。

次の重要な計画はこんな状況で果たして計画作成されていいのかどうか。やはり地方版子供子育て会議をどう役割を強化して機能させるのか、ということもそれぞれの地域における大きな課題です。

認定こども園に関する今後の課題

~選ばれる認定こども園に~

認定こども園についてもいくつか課題があって、特に大きいのは需給調整の特例により、認定子ども園への移行に抑制的な自治体が増えるのではないか、まだよく分かりませんが、認定こども園がかなり伸び悩む状況がもう見えてきていると、そしてそれに対してどう対応するかということが課題になります。認定こども園は保護者との直接契約ですから、保護者の選択を重視するという観点から第一希望、その園を第一に希望する方から受け入れていくことになります。

認定こども園からすれば入園第一希望の家庭に先に来てもらえるということになりますので、これはかなり大きなメリットになります。逆に言えばそれだけ来たいと言ってもらえる魅力を持ち、保育の質の高い園づくりができているかどうかということが、これからより問われます。
市町村が子供を回してくれるわけではない、自分たちの魅力を持って利用者から選ばれる、選んで貰うということが大きな課題になるだろう、というふうに考えているわけです。

それからもう一つの課題としては、先ほどもちょっとお話をしましたが、幼児教育保育を一体的にあるいは総合的に提供するだけではなく、地域子育て支援というのが内閣府や厚労省、つまりこれからできる「こども家庭庁」のかなり重要な政策になります。そこに認定こども園がどの程度をコミットできるのか。そのためには残念ながら今は充実していない財政措置あるいは人的配置をきちっとできるかどうか、これも大きなターニングポイントを迎えていると言っていいでしょう。

|保育政策に関する今後の課題

▽「0号認定」から捉えた子ども・子育て支援新制度

そして、少し結論めいた言い方をしますけれども、今後の保育政策に関する課題は何かと言うと、一つは先のお話をした「0号認定」という、主に3歳未満の在宅子育ての家庭、そこにどれだけ充実した支援ができるのか、そしてその際地域子育て支援と地域社会貢献を合わせた包括的なアプローチが重要になります。その際には本当に支援が必要な家庭は情報も時として届かない、あるいは余裕を持って園に来るなんていう余裕はない。むしろこちらからお出かけをしていく、こちらから声を掛けるこちらからお届けをする、手を差し伸べるそういうアウトリーチ型の支援が重要になります。

▽アウトリーチ型支援の方法はたくさんある

また本当に困難な家庭は園のアウトリーチでは届かない。*1医療的ケア児が最たるものだと思います。しかし、例えばそういう医療的ケア児をサポートするNPOがあった場合、そのNPOは活動資金が必ずしも潤沢でなく、打ち合わせ会議の場所もコストもない、あるいはいろんなお知らせしようにもチラシを作って配るお金もない。その時に、園が「うちの園の多目的室を会議室としていつでも使ってください」、「必要なチラシはうちの印刷機では幾らでも無料でプリントアウトしてあげましょう」、ということをやり、その医療的ケア児に熱心なNPOをサポートすることができ、そのNPOが充実した医療的ケア児のサポートができれば、園が直接医療的ケア児のサポートをしていなくても、そこに手の届くNPOを後方支援、バックヤードで支えることによって結果的にその地域全体として充実した医療的ケア児のサポートができるということになります。

表には出ない、直接手を差し伸べることはできないけれども、間接的なあるいはバックヤード的な支援というものも広い意味でアウトリーチ型支援として充実していく必要があります。
*1「医療的ケア児」とは、日常生活及び社会生活を営むために恒常的に医療的ケア(人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の医療行為)を受けることが不可欠である児童

▽幼児教育・保育施設に求められている機能は3つ

これからの教育・保育施設などに求められる機能は3つです。

1つは差別区別なくその地域の全ての子育て家庭を柔軟に受け入れるということです。そのことによって子供や保護者を地域で分断をしない。同じ隣近所に住んでいて片や幼稚園で、片や保育所で、保護者グループも違う、子供同士も当然保育時間その他も違って一緒に遊ぶこともない、地域が分断される。1つ目の機能が働けば、普段から親交があれば非常災害の時にも助け合うことが出来ます。

2つ目はみんなを包み込んで、みんなが共に気持ちよく暮らしていけるような包括的なインクルージョン機能が重要になります。親が働いている、働いていないということで分断をしない。それからさまざまな多様な機能を総合的に提供することが必要になりますので、その場合はインテグレーション機能(総合、統合)

3つ目は一方通行ではなく、子ども同士や保育者同士、子どもと保育者や保育者と保護者等々の多様な関係性を双方向で結ぶといったようなインタラクションの機能、この3つの機能をしっかりと持てるかどうかがこれから5年、10年先の厳しい時代の中で持続可能性を持てる教育・保育施設になっていけるかの大きな線引きになるのではないかと私は考えています。

人材不足の現状と解決法

保育者の就職する上で重要視している事とは

養成校で学んでいる幼稚園教諭免許、保育士資格を取得予定の学生に以前「保育施設への就職の理由」のアンケートを採ったことがあるのですが、圧倒的に多いのが元々保育者になることが夢だったからという話ですね。第一生命保険が毎年調査をしている「大人になってなりたいもの調査」* 2によっても女の子の常にベストスリーに入るのが保育園の先生、幼稚園の先生です。ところが実際には園に勤めない方が多い。

実は就職先を決めた最も多い理由は、その園の保育の理念目標方針あるいは保育内容ということになります。これはかなり実は重要なポイントだと思います。当然、保育内容・方法・保育の質、それから施設運営マネジメントの質、子供にとっての保育環境、そして職員にとっての職場環境はこの魅力、特に職員にとって働きやすい職場作りということでその魅力が重要になるわけですが、自分が勤めている園がどこを目指して、子どもを連れていこうとしているのか、保育の理念目標が実はかなり大きな魅力になっているということです。

そういう意味で、改めて自分の園の保育の理念目標方針というものをもう一度見直し再構築していただく必要があります。例えば、同じ言葉の「明るく元気な子」であったとしても、それが今の時代社会の中で本当に子供にとって何が必要なものなのか、そういったものも含めて園のすべての職員が自分の園の理念や目標も共通理解しているのか、そしてそれを保育と結び付けて展開できるのか、そこがかなり重要になっているということで、改めて保育の理念目標方針をしっかりとしていただきたいです。

しかしながら、園に勤めずに一般の会社に勤めたという方は、せっかく資格免許を取ったのに辞めた理由のかなり多くが、実習で園の現場を見た時に、実態を見た時に嫌になった、というケースが多いですね。そしてその結果企業に行く。ところが企業では、やっぱり選んだのは企業の理念・仕事内容は自分に合っているかということです。給料とか休暇とか福利厚生ももちろん重要なのですが、実は最も重視しているのは、企業に対してでさえ理念です。ましてや、幼児教育・保育の世界で自分の園の理念はどうなのだ、ということをもう一度お考え頂き、本当に血の通った生きた子供を育むための理念目標になっているのか、お考えいただきたい。
*2第一生命保険株式会社「大人になったらなりたいもの調査」https://www.dai-ichi-life.co.jp/company/news/pdf/2020_102.pdf

▽保育者が長く働きたくなる人材戦略マネジメント

人材はただ確保するだけじゃなくて、保育者が少しでも長く、高いモチベーションを持って質の高い仕事が出来るにはどうすればいいのかという視点が大切です。方向性を2つお伝えします。

1.離職率を下げる
1つはまず離職率を下げるためには、マイナスの要因を無くすことです。マイナス要因っていうのは、「こんな大変な仕事なのに給料安い」とか、「仕事に追われて満足に休みも取れない」とか、「毎日残業しなきゃいけない」とか、そういうのがマイナス要因ですから、そのマイナスをなくせば離職率は下がります。

つまり、処遇を改善する、有給休暇を自分の希望する日で少なくとも七~八割は取れるようにしたり、職員を基準以上に配置して一人一人の負荷を下げ、職員配置の改善によって働きやすい職場作りをするとか、残業はさせない、まして持ち帰る仕事なんか絶対させない、というマイナス要因をなくすことによって、離職率は下がります。それだけでは長くいい仕事ができるかと言われればそうではないです。

2.定着率を上げる

よりプラスのモチベーションを持っていかないといけないため、定着率 を上げるということが必要になります。離職率の低下と定着率の増加はイコールではありません。定着率を上げるためには今度は逆にプラス要因を増やさなきゃいけない。

増やすプラス要因っていうのは例えば、うちの園は園内外の研修機会が十分に保障されていて、私は学びの機会が多くて専門性を高めて自分も成長できる職場であるのか、またお互いに支え合える職場なのか、そして質の高い保育ができ子どもの育ちに貢献できていると実感できる職場なのか。そして自分たちが成長し、それが子どもの育ちに貢献できるということが同僚や園長やあるいは保護者にちゃんと認められ評価されている職場なのか、そういう職場であればもっと頑張ろう、もっといい仕事をしようと定着率は当然高くなるということです。

この両方を生み出していく。このことを軸に人材戦略を立てていくということが人材マネジメントの基本になります。もちろん専門性だけじゃなくて社会性も人間性も培って、 その上に専門性が乗っかるような人材マネジメントを考えなければいけない。是非そのこともしっかりと頭に入れていただきたいです。

そもそも保育業界における“生産性”とはなにか

▽保育の経営=マネジメントの質

最後に、経営、つまりマネジメントの質ということについてお話をしておきたいと思います。あえて生産性という言葉をここで使っています。ここでいう「生産性」とは経済産業省:保育現場における生産性向上手法の適用に関する調査報告書(平成24年3月)では、<保育現場における「生産性向上」とは、「子どもが健やかに育つよう質の高い保育を提供するための機能強化」>とみなしています。

▽一般企業の「生産性」と保育の世界の「生産性」定義が真逆である

人は減らしたら活路がありません。むしろ充実した人を投入しなきゃいけません。そして狭い園というよりも当然広い園っていうのがいいわけですから、施設設備はむしろ拡充しないといけません。一般の企業や工場で言う「良い生産性」とは真逆です。保育現場における生産性、あるいは生産性の向上というのは、子供が健やかに育つよう質の高い保育を提供するための機能の強化、これが保育の生産性です。

▽子どもには

1.保育の資質の向上へのカギ
そう考えた時には、目指す生産性の成果指標、アウトカムというのは子どもの健やかな育ちです。そのために保育の質を高めなきゃいけないってことですよね。

▽保護者や企業に対して

保護者や企業に対しては多様な保育サービス、保護者に対しては特に今仕事子育ての両立支援ということが課題になっていますから、それに対しては多様な保育サービスが必要になります。またその反射的利益として、企業は仕事を中断することなく辞めることなく、仕事子育ての両立をしてもらうことによって有意な(女性)人材に活躍してもらえるという、企業にとってのメリットが出てきます。当然、それにも多様な保育サービスが必要になります。

そして分断されがちな地域社会を持続可能なものになるようにやっていくためには、当然地域子育て支援が重要になります。そのためには支援の幅の広さ、そしてその支援の深さ・質が問題になります。先程言ったアウトリーチ的な支援を含めて、そういったものが充実することによって保育分野でいう生産性向上に繋がるということになります。そして、もっと言えば人材も施設も時間もたっぷり用意しなきゃいけないという、そこを重視した人材施設時間依存産業としての生産性はどうなのかと言うと、

2.保育分野が目指す業務改善
もっと言えば人材も施設も時間もたっぷり用意しなきゃいけないという、そこを重視した人材施設時間依存産業としての生産性はどうなのかと言うと、保育者が保育に集中するためには、いわゆるノンコンタクトタイム等を活用しながら逆に周辺業務は少し省力化しないといけません。

それはICTの導入であったり、保育補助者の活用によって周辺業務を省力化し、その浮いた時間エネルギーを保育本来であったり、保育を豊かにするためのノンコンタクトタイムに注ぐということが、保育の生産性を上げることに繋がります。

そしてその、何よりも肝心の人材の、保育者の資質を向上させるということが最大の生産性になるわけですが、そのためには先程言った人材マネジメントをどう徹底するかがポイントになります。また、そのことによって結果的に保育の質の向上につなげられる。

3.トップリーダーのマネジメント
そして3つ目は、そういったことを全てにおいて結局法人の理事長・学校法人社会福祉法人の理事長や各施設の園長といったトップリーダーがマネジメント力を発揮するということが最も重要ですね。そのことにより働き手の労務環境の改善とか、マネジメントという意味での経営の質の向上に繋がります。実はトップマネジメントが最も重要なんだろう、というふうに私が考えているところであります。

問われる園のマネジメント力

保育の質はここから先非常に重要になりますが、理想だけを語っても保育の質は上がりません。少なくとも私立民間の施設においては、例えば処遇も改善しなきゃいけない、あるいは職員の数を増やして配置の充実もしなきゃいけない、あるいは子供達の保育環境を整備しなきゃいけない。これ全て費用が発生するわけです。念仏だけで保育の質は上がりません。

実際に保育の質を上げるためには、そのためのさまざまな環境整備を行わなきゃいけない。ということは経営マネジメントの質も高めなければ、残念ながら保育の質もあげられないということになります。そのマネジメントというのはヒト・モノ・カネ・情報、あるいはブランド力、様々な資源が大なり小なり限られているわけですから、その限られた資源を活用して最大限成果を上げるような工夫や考え方、これをマネジメントと言います。

では、自分の園の資源って何でしょう。資源分析をしながら、それを組み合わせて活用して、どうやって自分たちが目指す理念・目標を実現するのかと、法人のミッションを達成するのかで、その工夫と実践、それがまさにマネジメントいうことになります。

最後に一言申し上げておきます、中長期ビジョンをちゃんと立てることが重要です。5年10年スパンのビジョンを立て、実践するための工程表を作り、そして発想の根底として、保育の質を支えるためにも経営マネジメントの質を上げなきゃいけない。

その発想には、ともするとノンプロフィットになりがちな、ノンプロフィットっていうのはプロフィットがノンですから利益否定、しかし公益法人も利益否定ではないです。ノットフォープロフィットで利益を追求しないだけであって、利益は尊重すると。その利益は必要なもので、戦略的に内部留保し、自分の園の事業の継続性に当てる。あるいは事業の拡大のチャンスが来た時に、その戦略的内部留保のお金を投資する。大災害が起きて半年間職員に収入が減った中で、職員の雇用を守るため半年間の職員の給与を払える内部留保を持ってなきゃいけない。二十年後の園舎を建て替えるその時に、今のような補助率でなくなった時に、それでも園舎を取り壊して立て直すようなライフサイクルコストも念頭に置いた継続計画が立てられるのか。全てノンプロフィットにはできません。

ノットフォープロフィットで利益は否定しない。ただし利益追求ではない。別に株主還元するわけではない。利益は子どもたち地域社会に還元する。そのためにも戦略的に自園の持続可能性を高めていかなきゃいけない。特に少子化が加速する今こそ、そういう発想で園のマネジメントを考えていただくということが非常に重要な課題になるということを申し上げて、私の方からの基調のお話にさせていただきたいというふうに思います。皆さんご清聴どうもありがとうございました。

講演者プロフィール

株式会社保育システム研究所
代表 吉田正幸 氏

○略歴

福岡市出身。大阪大学人間科学部卒業。
㈱保育システム研究所 代表取締役、保育専門誌「遊育」 発行人
大妻女子大学大学院非常勤講師(保育マネジメント特論)

○審議会など

文部・厚生両省の総合施設に関する合同検討会議委員
文部科学省:「新しい幼児教育の在り方に関する調査研究」企画評価会議委員
内閣府:認定こども園制度の在り方に関する検討会委員
厚生労働省:社会保障審議会少子化対策特別部会委員
厚生労働省:社会保障審議会児童部会委員
厚生労働省:保育士等確保対策検討会副座長
経済産業省:保育現場のICT化・自治体手続等標準化検討会座長
厚生労働省:保育の現場・職業の魅力向上検討会副座長 など歴任

神奈川県子ども・子育て会議委員(幼保連携型認定こども園認可専門部会副部会長)
京都市はぐくみ推進審議会特別委員
品川区子ども・子育て会議副会長
千代田区子ども・子育て会議副会長
板橋区子ども・子育て会議副会長
あきる野市子ども・子育て会議委員長
厚生労働省:子ども・子育て支援推進調査研究事業企画評価委員
内閣府:企業主導型保育事業点検・評価委員会座長
内閣府:子ども・子育て支援システム標準化検討会座長
内閣府:子ども・子育て支援調査研究事業企画評価委員会委員長 など現在

○著書(共著・分担執筆を含む)

「保育所と幼稚園~統合の試みを探る」(フレーベル館、2002)
「幼保一体化から考える~幼稚園・保育所の経営ビジョン」(ぎょうせい、2005)
「次世代の保育のかたち」(フレーベル館、2010)
「選ばれる園になるために~変革のビジョンと実践」(世界文化社、2013)
「認定こども園の未来~幼保を超えて」(フレーベル館、2013)
「認定こども園の未来~保育の新たな地平へ」(フレーベル館、2016) など

○その他

参議院文教科学委員会で認定こども園法の参考人意見陳述。
参議院「社会保障と税一体改革特別委員会」公聴会で公述人意見陳述。
衆議院内閣委員会で子ども・子育て支援法及び児童手当法一部改正の参考人意見陳述。
NHK「クローズアップ現代」「ナビゲーション」「視点・論点」のゲスト解説等に出演。

○株式会社保育のデザイン研究所について

<事業概要>
・保育運営法人、自治体等の保育の総合支援
・運営や開設のコンサルティング
・研修企画・実施 等
<法人概要>
湘南オフィス: 〒251-0055 神奈川県藤沢市南藤沢17-16 秋山ビルⅡ 602
代表取締役: 瀬木葉子
URL:https://hoiku-design.co.jp/

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