健康経営銘柄とは、健康経営度調査における認定制度のひとつです。
同調査には、ほかに健康経営優良法人の認定制度もあるため、仕組みが分かりづらいと感じる方もいるでしょう。
そこで本記事では、健康経営銘柄に特化して、仕組みや選ばれるメリットを解説します。
健康経営度調査を知ったばかりという場合も、健康経営銘柄を獲得するための方針を模索中という場合も、経営層の方はぜひご覧ください。
本記事を一読すれば、自社が対策に取り組むべき制度であるのかから、認定を受けるために必要な要素まで、理解を深められるでしょう。
※「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
※本記事は経済産業省の「健康経営銘柄」・「健康経営の推進について」・「ニュースリリース」・「健康経営銘柄2024 選定企業紹介レポート」を加工して作成
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目次
健康経営銘柄とは?
健康経営銘柄とは、健康経営度調査を受けた上場企業(※1)のなかで、特に評価の高い企業を選定する制度です。
選定は、東京証券取引所と経済産業省が共同で行っています。毎年、原則33社(※2)しか選ばれないという、非常に狭き門です。
しかしだからこそ、健康経営銘柄として選ばれれば、投資家や取引先、さらには顧客や求職者など、幅広い対象に好印象を与えられるでしょう。
特に投資家に関しては、近年、「健康経営に取り組んでいるか」を投資先を吟味する際に重視する傾向が強まっています。
「健康経営が実施されている会社は長期的に企業価値が向上しやすい」といった観点があるためです。
健康経営銘柄は、資金調達の拡充や円滑化を目指している企業ほど、価値ある称号となるでしょう。
※1 東京証券取引所の上場企業が対象
※2 特に優れた会社が多い場合には、1業種につき最大5社まで認定。ただし同率企業が6社以上の場合は、そのすべてを認定
※本内容は経済産業省の「健康経営銘柄」を加工して作成
【参考までに】健康経営とは?
健康経営とは、「経営戦略の一環として、従業員の健康増進を目的とした投資を行うこと」を指します。
現代日本では、長期におよぶ少子高齢化により、労働人口の不足および医療費の増加がますます深刻化すると予想されています。
このような国全体における課題の対策として推進されているのが、健康経営です。
また、健康経営を実施することは、働きやすい環境づくりにつながります。
健康経営を取り入れた企業では、「人材の確保および定着率アップ」や「生産性アップ」などのメリットを得られることが実証(出典:健康経営の推進について)されています。
※本内容は経済産業省の「健康経営の推進について」を加工して作成
健康経営について、より詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
「健康経営銘柄」と「健康経営優良法人」との違い
健康経営度調査には、健康経営銘柄のほかに「健康経営優良法人」の認定制度があります。
【認定制度の種類と対象企業】
- 健康経営優良法人…基準を満たした全ての会社が認定対象
- 健康経営優良法人 ブライト500…中小規模法人部門における上位500社が認定対象
- 健康経営優良法人 ホワイト500…大規模法人部門における上位500社が認定対象
- 健康経営銘柄…33業種中、原則1社ずつ(※)が選定対象
※特に優れた会社が多い場合には、1業種につき最大5社まで認定。ただし同率企業が6社以上の場合は、そのすべてを認定。
健康経営優良法人として認められたなかから、上位500社が「ブライト500」や「ホワイト500」に認定。
さらにホワイト500のなかの上場企業に対し、改めて厳正な審査を行い、特に高評価となった企業に与えられるのが健康経営銘柄としての選定といった構造です。(※詳しい選定基準やプロセスは、後述します)
なお、2つは異なる認定制度であるため、健康経営銘柄を獲得した場合、健康経営優良法人 ホワイト500の表彰も同時に得られます。
※本内容は経済産業省の「健康経営優良法人の申請について」を加工して作成
健康経営優良法人の認定制度について、より詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
健康経営銘柄に選定されるメリット
健康経営銘柄に選定されるメリットは幅広いですが、過去に選ばれた企業から寄せられたのは次のようなものでした。
- 情報発信の機会が増えた・自社のPR要素が増えた
- 健康に対する意識改革が社内全体に広まった
- 人材確保や資金調達などさまざまな面で経営に好影響を与えた
※本内容は以下の詳細も含め、経済産業省の「健康経営の推進について」を加工して作成
情報発信の機会が増えた・自社のPR要素が増えた
健康経営銘柄に選定されたことをきっかけに、取材の申し込みや、公演依頼が増えたという企業は多いようです。
また、健康経営は国を挙げて推進しているものであるだけに、社内外へのPRポイントとしても非常に有用です。
投資家や取引先、求職者などに対する情報発信の際、「健康経営銘柄への選定を盛り込める」こと自体も大きなメリットでしょう。
健康に対する意識改革が社内全体に広まった
健康経営銘柄の選定企業からは、「健康に対する意識改革が起きた」ことを喜ぶ声が届いています。
これは選定によるものというよりは、健康経営そのものによる効果が大きいと考えられます。
健康経営度調査において高評価を得るには、さまざまな取り組みを実施および継続し、社内全体に健康経営の理念を行き届かせなくてはいけないためです。
逆にいえば、健康に対する意識改革が従業員一人ひとりに起きない程度の取り組みでは、健康経営銘柄に選ばれることは難しいでしょう。
人材確保や資金調達などさまざまな面で経営に好影響を与えた
健康経営銘柄の選定企業は、経営に関わる幅広い面で好影響を感じているといいます。実際に寄せられた声の例は、次のようなものです。
- 学生からの認知度が高まり、就活生からの応募が大幅にアップした。さらに内定後の辞退率は減っている
- 取引先をはじめとした企業や投資家から高評価を得られた
- 健康経営銘柄に選定された他社と情報共有する機会が増え、他業種とのつながりも持てた
このような影響は結果として、優秀な人材の確保および定着、資金調達の円滑化、業績向上・事業拡大など、さまざまなメリットにつながるでしょう。
「健康経営銘柄2024」に選定された企業
健康経営銘柄は年1回の選定となっており、2024年度は27業種・53社が表彰されました。
※本内容は以下の詳細も含め、経済産業省の「ニュースリリース」を加工して作成
27業種53社が選定
健康経営銘柄2024の選定企業を表にまとめました。
企業によっては、取り組み内容をWebサイトや情報誌などで発信しているでしょう。自社で健康経営を実施する際の参考にご活用ください。
業種 | 企業名 | |
---|---|---|
鉱業 | 石油資源開発株式会社 | |
食料品 | 株式会社ヤクルト本社/明治ホールディングス株式会社/サントリー食品インターナショナル株式会社 /味の素株式会社 | |
パルプ・紙 | 大王製紙株式会社 | |
化学 | 株式会社トクヤマ/花王株式会社/第一工業製薬株式会社/富士フイルムホールディングス株式会社/ライオン株式会社 | |
医薬品 | 中外製薬株式会社/小野薬品工業株式会社/第一三共株式会社 | |
石油・石炭製品 | 出光興産株式会社 | |
ゴム製品 | ニッタ株式会社 | |
ガラス・土石製品 | TOTO株式会社 | |
鉄鋼 | 大同特殊鋼株式会社 | |
非鉄金属 | 株式会社UACJ | |
金属製品 | 株式会社SUMCO | |
機械 | DMG森精機株式会社/アネスト岩田株式会社 | |
電気機器 | ブラザー工業株式会社/株式会社正興電機製作所/セイコーエプソン株式会社/株式会社SCREENホールディングス | |
精密機器 | テルモ株式会社 | |
その他製品 | 大日本印刷 | |
電気・ガス業 | 大阪瓦斯株式会社 | |
陸運業 | 近鉄グループホールディングス株式会社 | |
空運業 | 日本航空株式会社/ANAホールディングス株式会社 | |
情報・通信業 | ソフトバンク株式会社/株式会社DTS/株式会社KSK/SCSK株式会社/株式会社NSD | |
卸売業 | 双日株式会社/伊藤忠商事株式会社/丸紅株式会社/豊田通商株式会社/キヤノンマーケティングジャパン株式会社 | |
小売業 | 株式会社丸井グループ | |
銀行業 | 株式会社しずおかフィナンシャルグループ | |
証券、商品先物取引業 | 株式会社大和証券グループ本社/野村ホールディングス株式会社 | |
保険業 | 第一生命ホールディングス株式会社 | |
その他金融業 | 株式会社ジャックス | |
不動産業 | 野村不動産ホールディングス株式会社 | |
サービス業 | 株式会社ディー・エヌ・エー/H.U.グループホールディングス株式会社/ユーピーアール株式会社/株式会社アドバンテッジリスクマネジメント |
「健康経営銘柄2024」の場合の選定基準とプロセス
健康経営銘柄の選定基準とプロセスは、毎年、見直されたうえで公募時期が近付くと公表されます。
ここでは、参考までに2024年度の選定基準とプロセスを確認しましょう。
主な選定基準
健康経営銘柄2024の主な選定基準は、次の4点でした。
- 重大な法令違反等がないこと
- 健康経営優良法人(大規模法人部門)申請法人の上位500位以内であること
- ROE(自己資本利益率)の直近3年間平均が0%以上または直近3年連続で下降していないこと(ROEが高い場合、一定の加点)
- 前年度回答についての有無や社外への情報開示の状況についても評価。また一定の加点対象に
健康経営に関する取り組みが十分に行われていることは、最低条件です。
健康経営銘柄として選ばれるには、ROE(自己資本利益率)や社会への情報開示状況などにおいても高い評価を得る必要があります。
また、前年度の回答有無も評価されるとのことなので、継続して健康経営度調査に申請し、取り組みの継続および改善することも重要だと推察されます。
※本内容は経済産業省の「ニュースリリース」を加工して作成
選定プロセス
健康経営銘柄は、次のプロセスで選定されます。
※出典:「健康経営銘柄2024 選定企業紹介レポート」(「健康経営銘柄2024」選定のプロセス)」内の画像を参照のうえ作成
健康経営度調査は、大規模法人部門と中小規模法人部門に分けて行われますが、いずれの部門にしても認定条件を満たした企業はすべて健康経営優良法人として表彰されます。
また、そのなかでも上位500社は、中小規模法人部門なら「ブライト500」、大規模法人部門なら「ホワイト500」といった特別な冠を持つ健康経営優良法人として表彰されます。
その後、ホワイト500に選ばれた会社、かつ東京証券取引所の上場企業は、改めて健康経営銘柄にふさわしいかを評価されます。
そうして評価結果が業種内で最高順位であり、全業種の最高順位企業の平均評価を上回っている企業のみが健康経営銘柄として選ばれるのです。
※本内容は経済産業省の「健康経営銘柄2024 選定企業紹介レポート」を加工して作成
健康経営優良銘柄と一緒に検討したい「おすすめ退職金制度」とは?
健康経営銘柄と合わせて検討したい、おすすめの退職金制度や企業年金制度を紹介します。
主な候補となる退職金制度
原則、会社の規模を問わず導入できる退職金制度として、「はぐくみ企業年金」「企業型確定拠出年金」と、主に中小企業向けの「中小企業退職金共済」の3つについて紹介します。
まずは、下表をご覧ください。
主要退職金制度の比較
はぐくみ企業年金 | 企業型確定拠出年金 | 中小企業退職金共済 | |
---|---|---|---|
根拠法 | 確定給付企業年金法 | 確定拠出年金法 | 中小企業退職金共済法 |
任意加入 | 可能 | 可能 | 全員加入 |
加入年齢 | 70歳未満 | 70歳未満 | 制限なし |
加入制限 | 役員も拠出可 | 役員も拠出可 | 役員は拠出不可 |
税制優遇 | 有り | 有り | 有り |
社会保険料 | 軽減可 (※1) | 軽減可 (※2) | 軽減不可 |
掛金拠出 | 会社の実質的な負担を抑制 (※1) | 会社が負担 (※2)
(会社負担分は損金計上可) |
会社が負担 (会社負担分は損金計上可) |
拠出金 上限/月 | 1,000円~給与の20% (上限40万円) | 1,000円~55,000円 ※iDeCoと併用の場合、上限額が変わります | 5,000円~30,000円の16段階 (※3) |
運用 |
基金が資産を運用 |
加入者が資産を運用 | 機構(※4)が資産管理・運用 |
受給額 | 運用成績により変動しない | 運用成績により変動する |
運用成績により変動しない |
受取り | 一時金又は年金/ 退職時、休職時、 育児・介護休業時にも受取り可能 | 一時金又は年金/ 但し、原則60歳以上に制限 | 一時金又は分割払い/ 退職後に受取り可能 |
※2:「選択制」を採用した場合、軽減できることがあります。
※3:パートタイマーなど短時間労働者の場合、特例掛金月額として2,000円から可能になります。
※4:ここでは「独立行政法人 勤労者退職金共済機構」のことを「機構」といいます。
おすすめは「はぐくみ企業年金」
はぐくみ企業年金は、現在、導入企業や加入者が急増している注目の企業年金・退職金制度です。
選択制などの制度設計により、会社負担を少なく始められるなど、従業員、経営者、会社それぞれにメリットが生まれるとてもおすすめの制度です。
まとめ記事で11の選択肢を紹介
こちらのまとめ記事で、退職金制度の選択肢を11件まとめて紹介しています。
他の制度のメリットやデメリットを体系的に比較・検討することができます。
※こちらの記事は2025年月3月時点の情報を参照の上、執筆しております。
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