このページでは、はぐくみ企業年金の基本的な仕組みや特徴と、ほかの主要制度との違いについて解説します。
なお、はぐくみ企業年金のメリットやデメリットについては、こちらの記事を参照ください。
※この記事は2024年6月に更新しております。
はぐくみ企業年金の概要
そもそも「はぐくみ企業年金」とは何か?
はぐくみ企業年金は、正式名称を「福祉はぐくみ企業年金基金」といい、厚生労働大臣の認可を受けて設立された企業年金制度です。また、「確定給付企業年金」(DB)に分類される企業年金制度になります。
なお、企業年金とは、企業が従業員の老後の生活の安定のために設ける年金制度のことをいいます。
主に福祉や医療業界の福利厚生を目的に誕生しましたが、現在ではさまざまな業種業界で利用されています。
確定給付企業年金とは?
確定給付企業年金(DB)は、確定給付企業年金法により設立された厚生労働省所管の企業年金制度です。
2022年度末時点で約911万人が加入するなど、さまざまな年金制度のなかで利用実績の多い制度です(厚生労働省の資料より)。
詳しくは、「確定給付企業年金(DB)の基礎知識とメリット/デメリット」の記事を参照ください。
エッセンシャルワーカーの支援のために誕生
はぐくみ企業年金は、福祉や医療業界など、福祉業界や医療業界の福利厚生支援を目的として、2018年4月に創設されました。
2024年4月時点で2260社以上が導入するなど、年々増加傾向です。
また、従業員など加入者の平均加入率は65.2%という実績です(2021年4月現在)。
導入が拡大している理由
はぐくみ企業年金は、制度を導入する会社にも制度の加入者にもどちらにもメリットが生まれる点が、導入が拡大している理由のひとつです。
「加入者から見たポイント」については、次の通りです。
加入者から見たポイント
はぐくみ企業年金の平均加入率は65.2%という実績ですが(2021年4月現在)、加入率の高さの一因に元本保証が挙げられます。
また、加入期間が1ヶ月以上あれば、積立額の全額を受け取ることができます。
加えて、「確定拠出年金」(企業型DCやiDeCo)の場合、資産運用は加入者自身が行いますが、はぐくみ企業年金の場合その必要がありません。
複数の国内大手生命保険会社などに委託して資産運用を行うため、それらの制度に比べて、加入者自身が資産運用面で煩わされることが少ないのも加入率の高さの一因です。
さらに、はぐくみ企業年金は高齢期の資産形成を目的とした制度ですが、退職時や休職時、育児・介護休業時などにも給付の受け取りが可能です。
このような点も加入率の高さの一因ですが、詳細については「はぐくみ企業年金のメリットとデメリット」についてのページをご確認ください。
制度を導入できる会社の条件とは?
はぐくみ企業年金は、原則、厚生年金の適用事業所であれば業界や業種を問わず導入いただけますが、これ以外にもいくつか条件があります。
また、はぐくみ企業年金の導入及び加入は、はぐくみ企業年金が加入促進事務業務を委託している株式会社ベター・プレイスが担当しており、同社が定める導入(加入)要件を満たした上で、審査を通過する必要があります。
詳しくは、導入要件についてのページをご確認ください。
他の制度やサービスとの違い
はぐくみ企業年金と他の退職金制度や年金制度と比べた場合に共通する大きな違いは、次のようになります。
①高齢期の資産形成が基本ですが、退職時などにも受給できる
はぐくみ企業年金は高齢期の資産形成のための制度ですが、退職時にも給付を受け取れます。
そのほか、休職時や育児・介護休業時にも受け取りが可能です。
②加入期間などによって元本割れが起こらない
ほかの退職金制度や年金制度の場合、加入期間や運用次第で元本割れが発生してしまう場合がありますが、はぐくみ企業年金の場合、こういった心配もありません。
加入期間が1ヶ月以上あれば積立額の全額を受け取れますので、仮に数年の離職であっても、給付額は掛金の元本を下回ることはありません。
③掛金の上限額は月額の給与や報酬の20%まで可能
はぐくみ企業年金の掛金は毎月1,000円から拠出でき、最大で毎月、月額給与や役員報酬の20%まで拠出できます(上限は40万円まで )。
※確定拠出年金(企業型DCやiDeCo)などとの併用が可能ですが、その場合、企業型DCやiDeCoの掛金限度額が変わりますのでご注意ください。
④経営者や役員も加入できる
ほかの退職金制度や年金制度の場合、加入条件はあくまで従業員のみといった制限もありますが、はぐくみ企業年金の場合、経営者や役員の方も加入することができます。
厚生年金保険被保険者であれば、パートやアルバイト雇用の従業員も含めて制度に加入できます。
確定拠出年金や中小企業退職金共済との違い
はぐくみ企業年金とほかの主要制度との違いを表組として一覧化すると、次のようになります。
それぞれ各ポイントについて解説します。
はぐくみ企業年金 | 企業型確定拠出年金 | 中小企業退職金共済 | |
---|---|---|---|
根拠法 | 確定給付企業年金法 | 確定拠出年金法 | 中小企業退職金共済法 |
任意加入 | 可能 | 可能 | 全員加入 |
加入年齢 | 70歳未満 | 70歳未満 | 制限なし |
加入制限 | 役員も拠出可 | 役員も拠出可 | 役員は拠出不可 |
税制優遇 | 有り | 有り | 有り |
社会保険料 | 軽減可 (※1) | 軽減可 (※2) | 軽減不可 |
掛金拠出 | 会社の実質的な負担を抑制 (※1) | 会社が負担 (※2)
(会社負担分は損金計上可) |
会社が負担 (会社負担分は損金計上可) |
拠出金 上限/月 | 1,000円~給与の20% (上限40万円) | 1,000円~55,000円 ※iDeCoと併用の場合、上限額が変わります | 5,000円~30,000円の16段階 (※3) |
運用 |
基金が資産を運用 |
加入者が資産を運用 | 機構(※4)が資産管理・運用 |
受給額 | 運用成績により変動しない | 運用成績により変動する |
運用成績により変動しない |
受取り | 一時金又は年金/ 退職時、休職時、 育児・介護休業時にも受取り可能 | 一時金又は年金/ 但し、原則60歳以上に制限 | 一時金又は分割払い/ 退職後に受取り可能 |
※2:「選択制」を採用した場合、軽減できることがあります。
※3:パートタイマーなど短時間労働者の場合、特例掛金月額として2,000円から可能になります。
※4:ここでは「独立行政法人 勤労者退職金共済機構」のことを「機構」といいます。
企業型確定拠出年金(企業型DC)との違い
企業型確定拠出年金(企業型DC)やiDeCo(イデコ)の場合、実質的に老後にならないと給付を受け取れませんが、はぐくみ企業年金の場合、高齢期の資産形成のための制度ですが、退職時や休職時でも受け取ることができます。
また、企業型確定拠出年金(企業型DC)やiDeCo(イデコ)は、資産運用は加入者自身が行いますが、はぐくみ企業年金の場合、複数の国内大手生命保険会社などに委託して資産運用を行うため、それらの制度に比べて、加入者自身が運用面で煩わされることがないのも特徴です。
運用成績によって給付額が目減りしない点も大きな違いです。
中小企業退職金共済(中退共)との違い
中小企業退職金共済(中退共)の場合、加入対象は従業員のみとなります。また、資本金や従業員数に制限があるため、主に中小企業向けの退職金制度であることも注意点のひとつです。
さらに、従業員全員の加入が必要であったり、掛金の減額が制限されているといった面もあります。
そのほか、加入期間によって受給額が変わり、2年(24カ月)以上3年6ヵ月の場合になって、掛金総額の100%を受け取れるようになります。
(3年7ヵ月以上からは運用利息などが加算されていくことにもなります。)
掛金や加入効果のシミュレーション
実際に、はぐくみ企業年金に加入した場合の積み立て効果についてシミュレーションが可能です。
下記のリンク先より、ぜひお試しください。
※表示される数値は、簡易的なシミュレーションであり、実際の数値と異なる場合があります。
はぐくみ企業年金は、確定給付企業年金制度であり、企業の従業員の福利厚生の充実および将来の資産形成の自主的な努力を支援する制度です。
株式会社ベター・プレイスでは、はぐくみ企業年金の設立趣旨にのっとり、加入推進活動(制度紹介・説明)を実施しております。
- [免責事項および注意事項]
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- 株式会社ベター・プレイスが実施するはぐくみ企業年金の加入推進活動は、はぐくみ企業年金の加入企業および加入者の社会保険料などの軽減効果を保証するものではありません。また、上述の効果については、選択制確定給付企業年金の性質上、副次的に発生するものであり、株式会社ベター・プレイスでは、予めその効果(およびデメリット)について説明を行っています。
- 加入者自身が選択した掛金額に応じて、毎月の社会保険料や将来の保険給付の計算をするときに用いる社会保険料の等級(標準報酬月額)に変動が起こる場合があります。
仮に社会保険料の等級が1等級下がる場合、毎月の社会保険料が下がる一方、加入1年あたり年額1,315円程度、老齢厚生年金が減少します。
また、健康保険から支給される傷病手当金、出産手当金、雇用保険から支給される基本手当(失業手当)、育児・介護休業給付金等も減少します。(ただし、国民年金からの給付額には影響しません。)
例)月2万円の掛金(社会保険料の等級が1等級下がることを想定)を10年続けた場合、生涯で受け取る厚生年金受給額は、合計で290,000円程度減少します。
※65歳から87歳(女性の平均寿命:令和4年簡易生命表:厚生労働省発表)までの22年間、年金を受給するケース
※上記は2024年1月時点の制度および情報をもとにした金額です - 以上の事項につきましては、株式会社ベター・プレイスより、制度加入以前に企業・従業員への説明を徹底して実施しております。